移植
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生体肝移植における後区域グラフトの有用性について
筒井 由梨子伊藤 心二戸島 剛男吉屋 匠平別城 悠樹伊勢田 憲史利田 賢哉吉住 朋晴
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s318_3

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抄録

【目的】成人生体肝移植(LDLT)において、グラフト選択は重要である。当科では、拡大左葉+尾状葉(Lt)や右葉(Rt)がグラフト不適格と判断した症例においてのみ後区域グラフト(Post)の適応を検討している。本研究では、各グラフトにおける成績を比較し、Postの有用性について検討することを目的とする。【方法】2013年12月から2022年3月に当院で施行したLDLT325例(Rt 197例、Lt 121例、Post 7例)を対象とした。また同時期に当院受診するも、移植を施行しなかった64例の予後を検討した。【結果】Postのグラフト容積はLtより有意に大きく(500mL vs 382 ml、p<0.05)、PostのRemnant liver donor weight rate (RLDWR)はRtより有意に高値で(10.7 vs 8.3、p<0.05)、Ltと同程度であった。ドナー術後のT-BilとPT-INRの最高値はRLDWRと負の相関関係にあり(p<0.05)、Postによる術後の良好な肝機能が示唆された。ドナーのGrade3以上の合併症はRt 5%、Lt 2.5%、Postでは1例も認めなかった。レシピエントの術後14日目のT-Bil及びPT-INRに有意差はなく、胆管合併症発生率も3群間で同等であった。レシピエントの生存率に関して、Rt及びLtを断念した非移植症例との比較では、Postで有意に生存率が良好であった(1年生存率 71.4% vs 29.7%)。【まとめ】後区域グラフトは、生体ドナーに対して安全に施行することができ、左右グラフトが不適合の症例に対するグラフト選択の一つとして有用であると考えられた。

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