2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s328_2
現在の腎移植の成績は10年生着率が90%に迫り、長期間免疫抑制剤を内服する症例が増加している。また腎移植のレシピエントは高齢化が進んでおり、悪性腫瘍の発生リスクも高くなると思われる。長期生着例、高齢レシピエントの増加に伴い、腎移植における悪性腫瘍は非常に重要な課題といえる。兵庫医科大学泌尿器科・腎移植センターでは1983年に腎移植を開始し、2023年12月末まで459例(献腎:129例、生体:330例)施行した。観察期間の中央値は9.5年(0.3~40.6年)で、20年以上の長期生着例は90例であった。52例(11.3%)56種類の悪性腫瘍を発症した。内訳は固有腎癌9例、PTLD6例、前立腺癌6例、乳癌4例、皮膚癌4例、膀胱癌4例、胃癌4例、甲状腺癌3例、肝細胞癌3例、子宮癌3例、大腸癌2例であった。腎移植から悪性腫瘍発症までの中央値は8.5年(0.3~35.8年)で、発症年齢の中央値は58.5歳(15.8~79.3歳)であった。死亡率は52例中9例(固有腎癌4例、胃癌、大腸癌、肝細胞癌、皮膚癌、膀胱癌1例)で17.3%であった。腎移植後の悪性疾患スクリーニングはIL-2レセプターを術後1か月、3ヵ月、半年で測定し、子宮癌・乳癌検診、腫瘍マーカー測定は毎年、内視鏡を用いた消化管スクリーニング、胸腹部CT、腹部エコーを1~2年に1回施行している。今後さらなる長期生着症例が増加することが予想され、悪性腫瘍の予防、早期発見、免疫抑制剤の調整を含めた治療は非常に重要だと考えられる。