移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
腎移植患者における深部静脈血栓症の検討
横山 直己兵頭 洋二田代 裕己遠藤 貴人西岡 遵北村 聡三宅 秀明
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s328_1

詳細
抄録

腎移植はその手術手技や侵襲度から深部静脈血栓症(DVT)を発症しやすい手術であり、また慢性期においてもステロイド製剤の長期使用などがDVT発症のリスクとなる。DVTは血栓が移植腎静脈に及んだ場合に移植片喪失の原因となり、また肺血栓塞栓症(PE)を合併した場合は致命的となるため、その予防や早期診断は重要である。当院の腎移植患者におけるDVT発症率、また発症の危険因子を調べた。【対象と方法】2010年1月から2023年6月までに当院で施行した腎移植患者348名を対象とし、その中で移植術後にDVTを発症した症例の検討を行った。またDVT発症に対するリスク因子の検討を行った。【結果】42例(12.1%)の症例でDVT発症を認めた。うち20例が移植術後3か月以内の発症であった。4例でPEの合併を認めた。移植側と同側のみの発症が10例、対側のみが7例、両側が25例であった。DVTにより移植片喪失となった症例および死亡となった症例は認めなかった。DVTを発症しなかった群と比較し、移植時年齢>60、BMI>25がDVT発症のリスク因子となった(いずれもp<0.05)。【結論】当院で腎移植後にDVTを発症した症例のうち、移植術後3か月以内に発症したものは約半数であり、慢性期での発症症例も多く認めた。周術期のDVT予防の重要性は言うまでもないが、慢性期においてもDVT発症の可能性は常に念頭に置く必要があると考えられた。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top