2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s329_1
[背景]腎移植のベースライン生検の各パラメーターの意義は症例毎に異なる.[方法] 当院にて2000~2023年に施行された生体腎移植110例(年齢44.6±15.8歳,男性70.0%,ドナー年齢53.4±10.5歳,男性39.1%)と献腎移植42例(平均48.7±10.3歳,男性64.3%,ドナー年齢51.9±13.2歳,男性50.0%,膵腎同時移植8例,肝腎同時移植3例含む)のベースライン生検を比較し,移植腎予後も検討した.[結果]生体腎移植症例に比較し,献腎移植症例では尿細管の萎縮と間質の線維化,細動脈の硝子様肥厚(ah),小動脈の内膜肥厚スコアが有意に高かったが,硬化糸球体の割合には差がなかった.ドナー年齢とahは生体腎移植症例と献腎移植症例いずれにおいても有意な相関が認められたが,硬化糸球体割合は献腎移植症例でのみドナー年齢と関連していた.観察期間8.7年(中央値)(四分位:5.0-12.9年)で,生体腎9例と献腎11例が移植腎機能を喪失した.献腎移植症例では,ドナー年齢で調整後も硬化糸球体の割合が1%上昇毎に,グラフトロスのリスクが有意に上昇した(ハザード比:1.03, 95%信頼区間1.00-1.06, P=0.03).一方,生体腎移植症例ではこのような関係は認めなかった.その他ベースライン生検所見と腎予後に有意な関連は認めなかった.[結論]献腎移植症例ではベースラインで慢性変化が認められる傾向にあった.移植腎予後と相関するため,献腎移植症例での硬化糸球体の割合には留意する必要がある.