移植
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HIV/HCV重複感染の血友病患者に対し後区域グラフトを用いた生体肝移植を施行した1例
佐藤 彩香原 貴信曽山 明彦松島 肇濱田 隆志右田 一成川口 雄太山下 万平今村 一歩木下 綾華足立 智彦関野 元裕金高 賢悟原 哲也江口 晋
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s334_3

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抄録

症例は60代男性。血友病Aに対する血液製剤投与によりHIVおよびHCVに感染した。HIVは多剤耐性株であり、経時的に抗ウイルス薬が追加・変更された。HCVは自然排除されたが肝線維化は進行した。2013年に初発のHCCに対してRFAを施行。以後、肝内再発を繰り返し、RFA、TACE、重粒子線治療が行われた。Child Pugh B(9点)、MELD score13点であり、HCCに対する治療選択が困難となってきたため肝移植適応と判断し、実子をドナーとした生体肝移植を計画した。術前画像ではviableなHCCなし。術前に第VIII因子製剤を使用した輸注試験を行い、周術期の投与量を試算した。また、術後の免疫抑制剤との相互作用を考慮し、抗HIV治療薬はビクテグラビルナトリウム・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドフマル酸塩配合剤、ドラビリン、レナカパビルに変更。Volumetryの結果を踏まえて後区域グラフト(GVSLV比38.3%)を選択し、手術時間13時間7分、出血量7,046 gで終了した。免疫抑制剤はステロイドとBasiliximabで導入し、タクロリムスは術後4日目より開始した。術後、第VIII因子活性は速やかに上昇し、術後2日目に第VIII因子製剤の投与を終了。術後経過は良好で合併症なく、術後47日目に退院した。血友病に伴う出血傾向、耐性HIVに対して「血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究」班での研究成果をもとに十分な準備を行い、良好な結果を得ることができた。

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