2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s335_1
【はじめに】重症複合免疫不全症(SCID)は生後早期から重症感染を生じ救命には造血幹細胞移植(HSCT)が必要となる疾患であるが、胎児期に移行した母体由来の免疫細胞を排除できず、移植片対宿主病(GVHD)でみられる症状と類似した肝障害や皮膚障害を起こす場合がある。【症例】6か月男児。1か月時に黄疸を認め、肝生検でT細胞の浸潤、胆管構造の消失、胆汁鬱滞を認めた。後に低γグロブリン血症よりSCIDを疑い遺伝子診断にて確定された。母親由来T細胞を血液中に認め、それに伴う胆管障害・肝障害と考えられた。HSCTを考慮するもChild: B(8点)の肝障害のため移植前治療の完遂は困難と判断し、先行的に生体肝移植を行い、肝機能の改善を得てHSCTを実施する方針とした。【手術】血液型不適合の母親より肝外側区域を移植した。術前より母体由来T細胞抑制のためタクロリムスを使用し、術後はタクロリムス・ステロイドにて免疫抑制を行った。周術期感染予防はSSI予防のCTX+ABPCにGCVの予防投与を追加した。【経過】術後1か月で胆汁漏を認め、胆管空腸再吻合を要したがその後は問題なく経過し、肝移植術後2か月で母親をドナーとしたHSCTを施行し3週間で生着を認めた。真菌感染やGVHDによる下血、体重増加不良などを認めたが改善し、肝移植後11か月で免疫抑制剤を終了し、肝移植後1年で退院した。【結語】SCIDに肝障害を併発した症例に対して生体肝移植を先行しHSCTを行った一例を経験した。