2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s336_3
【目的】
生体肝移植を主体とする日本の肝移植医療において,ドナーの安全性は担保すべき前提条件であり,周術期のみならず術後長期の安全性についても留意する必要がある.今回,我々は生体肝移植ドナーの術後短期・長期成績について報告する.
【方法】
1999年~2024年5月までに当院で行われた生体肝移植ドナー90例を対象とし,ドナー背景,術後短期合併症,長期合併症について検討した.当院の肝移植ドナー適格基準は健康な65歳未満で予定残肝30%以上である(2021年3月改訂).
【結果】
ドナーは右葉グラフト52例(57.8%),左葉グラフト34例(37.8%),後区域3例(3.3%),外側区域1例(1.1%)であった.年齢は平均値40.6歳であった.術前ICG15分値,k値は平均6.05%,0.200であり,ドナー残肝率,残肝k値の平均は48.9%,0.080であった.ドナーの周術期合併症は20症例(22.2%)であり,内訳は胆汁漏12例,胃排泄遅延3例,胸水貯留5例,創部感染1例,門脈血栓症1例,精神疾患1例であった.2010年以前では合併症発生率31.5%(CD分類:3b 1例,3a 5例,2 9例,1 2例)と高率であったが,2010年以降は12%(CD分類:3a 1例,2 2例,1 1例),2021年3月以降は7.6%(CD分類:2 1例)と改善している.術後長期合併症は認めておらず, 若年ドナーのうち術後3例が妊娠し, 無事出産している.
【考察】
ドナー,グラフト選択や周術期管理を改善していくことでドナー手術の安全性が向上している.