移植
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膵島移植後リンパ増殖性疾患の1症例
倉橋 光輝穴澤 貴行山根 佳出羽 彩石田 叡長井 和之伊藤 孝司波多野 悦朗
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s340_3

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抄録

背景:移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lympho- proliferative disorders : PTLD)は,移植後の免疫抑制状態が背景のリンパ増殖性疾患である。本邦の固形臓器移植後では約1-5%程度と報告があるも、膵島移植後の報告例はまだない。我々は、膵島移植後にPTLDを発症した1例を経験したので報告する。症例:50代女性。10代で1型糖尿病を発症、17年前に末期腎不全に対し生体腎移植、13年前に脳死膵移植が施行されるも9年前に移植膵へ1型糖尿病が再燃、膵島移植を希望。6年前から昨年で3回の膵島移植が施行された。その後、移植膵島や腎の機能は良好も、本年に発熱が持続。EBV-DNAは230コピー/μgDNAと上昇し、CTにて右後腹膜腫瘤、腸間膜リンパ節腫大、左腋窩腫瘤を認め、PTLDが疑われた。2カ所の生検結果からDLBCL GCB typeの診断となった。免疫抑制剤は中止せずR -CHOP療法を開始。現在治療への反応性は良好である。考察:膵島移植は低侵襲性から複数回の移植が可能だが、サイモグロブリンの投与など、移植時に強い免疫抑制療法を要す。強い免疫抑制療法を複数回実施することから、PTLD発症リスクは低くないと考えられる。今症例では、膵島移植に加え、腎移植、膵移植も施行され、複数回の移植後であること、免疫抑制剤を長期使用していることもリスク要因と考えられる。膵島移植後PTLDの本邦初報告例であり、今後の膵島移植プロトコールの検討において、重要な症例であると思われた。

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