移植
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膵移植後の急性期出血性合併症に対する治療成績の検討
市川 寛三浦 宏平小林 隆石川 博補廣瀬 雄己安部 舜河内 裕介滝沢 一秦島田 能史坂田 純池田 正博田崎 正行齋藤 和英冨田 善彦若井 俊文
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s342_3

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抄録

【背景】膵移植において術後早期の抗凝固療法は,静脈血栓によるグラフト喪失を回避するうえで重要である.一方,抗凝固療法による致命的な出血性合併症も危惧されるため,厳重な周術期管理が必要である.【目的】当科で経験した膵腎同時移植後の急性期出血性合併症の3例を報告する.【症例】1例目は術後1日目に腎グラフト周囲の血腫除去,5日目に膵グラフト周囲の血腫除去を施行した.膵腎グラフト機能は徐々に改善し,術後約半年でインスリンから完全に離脱した.2例目は術後3日目に腹腔内出血に対し膵グラフト周囲の止血術を施行した.ドレーン性状を観察しつつ抗凝固療法再開のタイミングを見計らっていたところ,9日目に膵グラフト静脈血栓症を生じ膵グラフトの摘出を余儀なくされた.3例目は術後1日目に膵グラフト周囲の血種除去,2日目に腎グラフト周囲の血種除去を施行した.膵グラフト機能に問題なく,術直後よりインスリンから離脱した.【考察】膵グラフトの生着が得られた2例は,いずれも早期に血腫除去を実施したことで不可逆的なグラフト障害を回避した.グラフト摘出となった1例は,再開腹止血術後に抗凝固療法が再開できず血栓症を起こすリスクが高い状態であった.【結語】膵移植では閉腹前の十分な止血操作,術後早期のこまめな血流チェック,出血性合併症を疑った場合の迅速な治療介入が不可欠である.

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