日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-F05 重症心身障害施設利用者が持つ死生観
宮下 阿佐子
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2017 年 42 巻 2 号 p. 244

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抄録
研究目的 当施設での先行研究で、高齢化した母親が母親役割を果たす上での葛藤や子どもや自分自身の生死に対して不安を持っていることがわかった。しかしながら重症心身障害施設利用者自身がもっている死生観は明らかになっていない。そこで思いを表出することができる患者から現在の老いや死に対する考え方を知ることで、今後やってくる終末期の看護に反映できるのではないかと考えた。 研究方法 対象:当病棟の利用者の内、以下4点の条件に該当する3名。 1. 50歳前後もしくはそれ以上の年齢 2. 意思疎通を図ることができる 3. 自分の考えを述べることができる 4. 研究に対する説明と同意ができる 方法 インタビューガイドに基づき自由面接法にて実施。対象者が意思表示するため時間を要する等身体的負担がかかることを考慮し、インタビューは1人につき2回に分け、インタビューの実施で受ける精神的影響の可能性を考え、臨床心理士の協力を得られるよう配慮し実施した。 結果 56コードよりサブカテゴリ13、カテゴリとして「老いの自覚」「生きている喜び」「これからの生き方」の3つに分類した。「老いの自覚」では身体機能の低下から老いを感じ、精神的に自分の老いに不安を感じている「生きている喜び」では老いた自分を自覚しながらも生きる支えがあることで今喜びを感じている「これからの生き方」では前向きに生きていきたい、人生を充実して生きていきたいという思いが強く感じられた。 結論 1. 重症心身障害者は自分の老いや老後について自覚し、考えている。2. 年齢による老いを自覚をしており、今の生活の中で生きる喜びを感じながらも前向きにこれからの生き方を考えている。3. 身体機能の維持は重症心身障害者のこれからの人生の充実につながっていく。 4. 高齢化していく重症心身障害者の終末期への思いを傾聴し、患者の望みをかなえられるよう個別性を踏まえた看護の提供が必要。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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