2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s362_1
【症例】33歳女性、IgA腎症による末期腎不全に対し2022年に父をドナーとする生体腎移植を施行。左腸骨窩を展開、移植腎動静脈は外腸骨動静脈へ吻合、Lich-Gregoir法にて尿管膀胱吻合を行った。16G生検針による1-hour biopsyを施行し、刺入部は吸収性局所止血材にて止血。手術終了後、麻酔覚醒前の移植腎エコーでは血流良好であった。帰室後に移植腎エコーを再検すると、腎周囲に血腫を認め、ドップラーではスパイク状の波形を呈していた。また、強い創部痛も認めた。単純CTにて移植腎被膜下血腫を認めた。症状改善および移植腎血流改善を期待し、移植腎被膜下血腫除去並びに止血術を施行。その後、移植腎は良好に機能し、現在に至るまで経過良好である。【考察】当院では腎移植術中に腎生検を実施し、生検箇所に吸収性局所止血材をあてて圧迫し止血している。また、術直後と帰室直後に移植腎エコーを実施している。腎実質が圧迫されて高血圧、腎不全を呈する病態(Page kidney)の原因として移植腎生検や腎移植手術、外傷が挙げられる。移植腎生検後の被膜下血腫は稀だが移植腎機能不全をきたしうる重篤な合併症である。血腫の急速な増大が見られる場合や腎不全が見られる場合には外科的介入が必要となる。本症例では術直後の移植腎エコーでは明らかな血腫を認めず、帰室時の移植腎エコーにて明らかになったことから、麻酔覚醒時の血圧上昇が誘因となり、被膜下血腫をきたしたと考えられる・