2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s377_1
【背景】新規免疫抑制剤の開発は、臓器・幹細胞移植後の患者やアレルギー・自己免疫疾患の患者に大きな利益をもたらす可能性がある。我々は過去、抗がん剤の一種であるMEK阻害剤が、免疫抑制剤として有用な可能性を報告してきた。今回、ファースト・イン・クラスのMEK阻害薬であるトラメチニブ(TRA)の、免疫系に対する作用を調べ、そのメカニズムを明らかにしたので報告する。【方法・結果】マウスの脾細胞T細胞のin vitro増殖試験においてTRAの抑制能を評価した。培養液中のトラメチニブ濃度は1nM-100nMに設定した。その結果、TRAは、CD4/CD8 T細胞の増殖と、活性化T細胞に発現するCD25およびTIM3を用量依存的に抑制し、T細胞関連サイトカインの分泌も併せて抑制した。また、TRAは活性化T細胞のG1停止とアポトーシスを誘導することにより、T細胞の増殖を抑制することが解明できた。さらに、毒性については低濃度TRA(1-10nM)ではT細胞および正常マウス肝細胞に対して毒性がないことも確認できた。【考察・結語】本研究ではTRAが、サイトカイン分泌の抑制とともに、G1停止とアポトーシスを誘導することにより、CD4およびCD8 T細胞の増殖を抑制することが解明できた。T細胞、正常肝細胞への毒性が低いことも確認できており、TRAの免疫抑制剤としての適応拡大への可能性を示すことができた。