2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s386_2
症例は71歳男性。糖尿病性腎症による慢性腎不全に対しX-1年1月に妻をドナーとした血液型不一致での生体腎移植を施行。X年8月にCOVID-19に感染し、10日間解熱せずCTで二次性細菌性肺炎を認め、抗菌薬投与で改善した。同年10月31日に40℃の発熱および左肺上葉に空洞を伴う浸潤影を認め、細菌性肺炎としてPIPC/TAZ+AZMによる抗菌薬加療を開始したが連日高熱が持続し、11月4日に身体所見より髄膜炎を疑い腰椎穿刺を施行したところ、多核球優位の細胞数増加を認め細菌性髄膜炎と診断した。CAZ+AMPC+VCMでの経験的治療を開始したが解熱は得られず、髄液培養では有意な原因菌を検出できなかった。11月8日の頭部MRIで右側脳室後角に浮腫性病変があり、髄液再検で細胞数のさらなる上昇を認め、脳膿瘍の形成かつ抗菌薬は不応と判断した。経過と肺野の病変も考慮してノカルジア症も鑑別に挙げ、MEPM+LZDに治療薬を変更したところ、解熱傾向をみとめ11月13日の髄液検査では細胞数は著明に改善していた。その後LZDによる血小板減少があり、ST合剤に変更するも腎機能障害など副作用を多数認めたため、多剤を適宜変更しながら治療を継続し感染コントロールを得ている。髄液培養や原因菌同定のための各種検査を施行したが原因菌の特定はできず、治療方針の決定に難渋した症例であり、文献的考察を踏まえて報告する。