熱帯農業
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酸素不足条件下における日本稲とインド稲の発芽, 初期生長および呼吸の差異
長田 明夫
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1982 年 26 巻 2 号 p. 93-100

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抄録

熱帯では, 苗代播種に際して幼芽・幼根が10mm位に達するほどの催芽を行い, かつ播種後湛水しない慣行がみられる.日本における程度の催芽, 播種後湛水という方法といちぢるしく異なる.このことは, 日本稲とインド稲の間で, 発芽・伸長時の酸素要求度が異なる可能性を示している.そこで, 酸素不足条件下での発芽・初期生長とその間の呼吸の様相を, 口本稲・インド稲各10品種 (Table1) について調査し, つぎの結果を得た.
1.5cmに湛水した苗代中で, 水面上への苗の出現率は日本稲品種の方がインド稲品種より大であった (Table2) .
2.5cmの深水中での発芽率は, 日本稲品種では浅水 (種子が丁度浸る程度) 中とほとんど差がなかった.インド稲品種では深水による発芽抑制がみられた (Table3) .
3.深水中での幼芽の伸長は, 両品種共浅水中より大となったが, その程度は日本稲品種の方がいちぢるしく大きかった (Table4) .
4.低酸素分圧下での日本稲品種の幼芽の伸長は, 酸素1~10%の間でかえって促進され, 窒素ガス中でも空気中よりやや大きかった.インド稲品種は酸素分圧の低下と共に伸長は減少し, とくに5%以下で減少が大きかった (Fig.1) .
5.酸素分圧1%中で, 日本晴 (日本稲) , T136 (インド稲) の置床後1~5日における呼吸商は, 共に1よりかなり大きかったが, 日本晴の方がT136より顕著に大であった (Fig.2, Table5) .またすべての供試品種の酸素1%中, 置床3日後の呼吸商も日本稲の方が大であった (Table6) .
6.以上の結果より, 日本稲がインド稲より嫌気条件下でよく発芽・伸長できるのは, 高い発酵 (分子間呼吸) 機能をもつためであると結論された.

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