抄録
東南アジア, 特にフィリピン, インドネシア, インドはココナッツ主産国であり, これらの地域ではココナッツは主要農作物であり, その完全利用は重要な課題となっている.コブラの主用途は油であり, したがって莫大な量の搾油残渣がココナッツ油工場から排出されている.しかし残渣の一部は飼料に使われているに過ぎず, 充分な利用法はまだ見出されていない現状である.
搾油残渣には約50%のマンナン (ガラクトマンナン) が含まれており, このようにマンナン含量が高く, かつ純度の高いマンナン源は自然界では稀である.このようなことから著者らは, 酵素によるマンナンの有効利用法の研究を行い, マンノースやマンノオリゴ糖類を能率的に調製するプロセスを考案し, 同時にこのプロセスに関与する酵素系の生化学的性質の解明を行ってきた.しかし同マンナンの微細構造と酵素の基質特異性については不明な点が多い.本報ではこれらの点を明らかにすることおよびさらに付加価値の高い糖類の調製を行う目的で実験を行い, 以下の結果を得た.
放線菌のβ‐マンナナーゼによってコプラガラクトマンナン (ガラクトース: マンノース=1: 14) を加水分解し, 3種のβ‐1.4マンノオリゴ糖 (重合度2~4) と4種のガラクトマンノオリゴ糖 (1: 4, 1: 5, 2: 5, 2: 6) の7種のオリゴ糖を分離取得した.これらのオリゴ糖類の構造研究によって, コプラガラクトマンナンはβ‐1, 4マンナンの主鎖からなり, その主鎖のマンノースにガラクトースがβ‐1, 6結合している構造であることが明らかとなった.また, 4種のガラクトマンノオリゴ糖の還元末端と非還元末端はいつれもマンノースであり, これらのマンノースはガラクトースの側鎖をもたなかった.この結果, 放線菌マンナナーゼはガラクトース側鎖をもたない主鎖のマンノースに特異性があるものと推論した.