抄録
乾燥地において, 周年にわたりさし木可能な装置を開発する目的で, 不織布で密閉し, 中にミスト装置を組み込んだ装置内でさし木を行い, 装置内の日中の温・湿度の変化と発根との関係を, 従来の密閉ざし及び対照区と比較調査した.1. 乾燥地におけるさし木繁殖には密閉ざしが有効であること, 2. 密閉条件下で高い湿度条件が保持されれば, さし穂は35~40℃の高温に長時間耐えること, 3. 日中, 定期的に起こる大きな温度及び湿度の較差に遭遇しても, 夜間の高湿度条件が保たれればさし穂の生存及び発根に影響は見られないこと, 4. 1分間のミスト噴霧で温度が5℃以上低下し, 約40分間持続すること, が明らかになった.このことから, 試作した密閉ミスト装置は, 乾燥地における盛夏期のさし木繁殖装置としての適応性が確かめられた.しかし装置内のより安定した温・湿度の保持には不織布の材質や厚さ, ミスト粒の細かさ, 噴霧間隔等の検討が必要である.