熱帯農業
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タイ国ノンヤン遺跡で発掘された炭化米の形態及び粒形の歴史的変遷
片山 忠夫
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1995 年 39 巻 2 号 p. 63-68

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抄録

鹿児島大学新田栄治教授らによって, 1990年にタイ国ノンヤン遺跡 (14゜50'N, 103゜34'E) で発掘された炭化米の粒形を測定した.年代はB.P.2, 120±100と推定されている.完全粒と目される30粒を選び, 9形質を調査し, 更に, 15の形質問の相関を計算した.平均値で, 粒長4.81mm, 粒幅2.44mm, 粒厚1.79mm, 長幅比1.98, 長厚比2.71mm, 幅厚比1.38, 粒面積11.75mm2, 粒体積20.95mm3, 粒重8.23mgを示した.従って本試料はA型, 日本型と判定された.形質間の相関では, 6組合せが0.1%, 1組合せが1%, 1組合せが5%水準でそれぞれ有意性を示したが, 7組合せは有意性を示さなかった.各形質はいずれも極めて小さな標準偏差値を示した.以上の結果を総合し, 本試料は, 1または少数の品種から構成され, 集団内変異が小さい品種であったと推定された.
著者が過去に得た, 玄米形質値から籾形質値を推定する換算法を用いて, 本試料の籾形質値を推定した.その結果, 籾長6.69mm, 籾幅2.88mm, 籾長幅比2.34などの平均値を得, 同じく籾はA型に属すると判定された.
過去の報告のうち, タイ国内でノンヤン地域に比較的近い地域の材料を用いた6試料と本試料の籾長と籾幅値を比較検討した.その結果, 本試料は全試料の中では短粒, 狭粒, 小粒, 丸粒に属し, かつ集団内変異が小さい特徴を示した.またタイ国東部に於ては, 栽培稲の粒形は, 歴史的に長粒へ, また広粒へと変遷してきたものと推定された.

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