抄録
熱帯諸国の育種プログラムの整備度が満足の行くものであったなら, CIATを始めとする国際農業研究機関の役割は, 遺伝資源の収集, 保全と配付に限られていても良いはずである.実際にはごく一部の国を除いて育種プログラムの成熟度は低く, 国際研究機関側が遺伝資源をすぐに育種に使えるレベルにまで改良して, 各国育種プログラムに提供する事が必要である.従って有用性の高い育種素材を育成する事が, 国際農業研究機関の最も重要な仕事である.キャッサバの場合, 育種目標, 育種方法に大きな混乱はなく, 正統的な育種方法に従う事で相応の成果が期待出来る.CIATのキャッサバ育種は, まず良好生育条件下での生理的収量性の底上げに始まり, 主として収穫指数の向上により, 出発点の無選抜品種集団に比べれば, 最初の10年間に生重収量の集団平均でほぼ100%の向上を成し遂げる事が出来た.同時に同じ育種集団を酸性やせ地で病虫害多発の環境で選抜する事によって, 多くの収量阻害要因への耐性を付加する事が出来た.更にタイCIATでの半乾燥気候条件下で育種を続ける事によって, 乾燥条件への耐生と共に, 根乾物率向上とバイオマス増大にも顕著な成果が得られた.従って現在のCIATのキャッサバ育種集団は, 高収性に劣悪環境適応性が付加された.各国育種プログラムにとって即時利用可能な, 育種素材を提供するものと考える.