抄録
浮稲は深水下で節間の伸長が著しく促進される.急激に伸長が促進されている節間への同化産物の供給の増加は, 深水下で生育する浮稲にとって欠かすことができない.我々の目的は, トレーサーとして13Cを用いて, 深水直後の各器官のシンク能と同化産物の分配パターンの変化を明らかにすることである.さらに, シュクロースの形成率を測定することにより, ソース能に及ぼす深水の影響も調査した.今回の研究では, ソースとしての葉身が最上位節間上にある葉に限定された植物体を使用した.最上位節間への炭素の転流は, 深水処理後すぐに促進された.対照的に, 深水処理により, 低位の器官における乾物重とラベルした炭素の分配率の増加が抑制された.よって, 浮稲は深水下での生育に有利なように同化産物の分配パターンを変化させ, それらの特性により, 浮稲は深水下で生存するための同化産物の効率的な利用を可能にしていることが明らかとなった.最上位節間上にある葉身のシュクロース/デンプン比は, 深水処理により著しく増加した.この結果から, 深水処理により水面上にある上位葉のソース能は増加することが示唆され, 以前報告された水面上の上位葉における単位面積当たりの光合成能力が深水により増加することと一致した.