熱帯農業
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キマメ品種の生殖期間中にみられる茎中の炭水化物蓄積パターンの差異
松永 亮一伊藤 治Chris JOHANSENTheertham P. RAO
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2004 年 48 巻 2 号 p. 63-69

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抄録

キマメは基本的には多年生植物であり茎中に炭水化物を蓄積するが, 生殖生長期間中における茎中の炭水化物の役割についてはほとんどわかっていない.そこで, 近年育成された極早生/早生品種を中心に, 生態型ならびに伸育型の異なる9つのキマメ品種を用いて, 生殖生長と茎中の炭水化物との関係を明らかにしようとした.
供試したキマメ品種のうち, 極早生ならびに早生品種は晩生品種より開花が早まったことにより, 2度目の開花・成熟が可能となり, それに伴って子実生産が増加した.いずれのキマメ品種においても茎中のデンプン含量の増加は開花期前には認められず, 第1次開花期以降に認められた.そこで, 第1次開花期から第1次成熟期までの蓄積パターンに基づいて供試した9品種を3つのグループに分類した.グループIとIIIでは莢実の生長が衰えた後デンプン含量が増加し, グループIIでは莢実とデンプン含量の増加が同時におこった.さらに, グループIIIでは莢実の生長が衰えた後のデンプンの蓄積が開始するまでの期間がグループIより長かった.グループI, IIでは第2次の莢実生長期に再度デンプン含量が増加し, 第2次成熟期には低下した.子実肥大期のシンク/ソース比 (生長中の莢実乾物重/葉面積) と茎中デンプン含有率との間には負の相関関係が認められたことから, 生殖生長量が小さいほど多くのデンプンを茎に貯蔵していることが明らかとなった.このことから, 生殖期間中におこるキマメ品種の茎中でのデンプンの蓄積は受動的であり, 相対的に弱い生殖生長によって生じる光合成産物の供給過剰が原因と考えられた.しかしながら, 生殖生長期間中にみられた茎中デンプン含量の増減は, キマメ品種が茎に一時的に貯めた光合成産物を再転流・再利用していることを示唆している.本稿では, 貯蔵炭水化物の子実への移行についてその可能性について論じる.

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