熱帯農業
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タイ国東北部砂質傾斜畑における土壌特性値の空間分布と有機物動態
舟川 晋也矢内 純太林 慶一林 梓司渡邊 哲弘Chairat NOICHANATawatchai PANITKASATERoengsak KATAWATIN小崎 隆縄田 栄治
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2006 年 50 巻 4 号 p. 199-207

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抄録
本研究では, コンケン近郊の砂質傾斜畑作地における土壌特性値の空間分布パターンおよび有機物動態について調査した.斜面上のサトウキビ植栽地, 斜面下部のマンゴー植栽地, 低地の水稲作付地, 反対側斜面のチーク植林地を含むように設定された510×270mの調査地において, 30m間隔で全116点の十壌試料を採取し, ジオスタティスティクスを用いて土壌特性値の空間分布パターンを解析した.その結果, 土壌の有機炭素・窒素含量, 粒径分布およびこれらに関連する性質においては明瞭な空間的変異が認められた.チーク植栽地とマンゴー植栽地では, サトウキビ植栽地と比べて土壌はより細粒質であり炭素・窒素含量が高かった.このような傾斜地における土壌特性値の不均一性をもたらす駆動力として, 土壌有機物動態と土壌侵食が想定された.引き続き地形と土地利用の点から代表的な5地点において, 土壌有機物動態を測定した.表層15cm土壌における有機物蓄積量および年間土壌呼吸量 (土壌有機物分解量) は, ともに木本植栽地点において高かった.年間土壌呼吸量は4.01~8.57Mg C ha-1y-1であり, しばしば土壌有機物蓄積量の40%を超えた.土壌有機物動態による土壌特性値の不均一化は, 砂質傾斜畑においては容易に進行すると考えられる.
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© 日本熱帯農業学会
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