熱帯農業
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水田で栽培されたノットグラス (Paspalum distichum L.) ロールベールサイレージの利用性
浅野 陽樹小畑 寿藤井 真理柄本 康杉本 安寛
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2007 年 51 巻 2 号 p. 59-65

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抄録

水田においてノットグラス (Paspalum distichum L.) を多量窒素施肥により栽培し, ロールベールサイレージとした場合の利用性を明らかにすることを目的とし, 同サイレージの品質および同サイレージの品質に及ぼす調製時期の影響を検討した.サイレージの発酵品質, 硝酸・亜硝酸態窒素含量および嗜好性について, 試験1では, ノットグラスサイレージとその他4種類のサイレージとを比較検討し, 試験2では, 7月, 8月および9月に刈り取り, 予乾後に調製したそれぞれのノットグラスとバヒアグラスサイレージとを比較検討した.試験1の結果, ノットグラスサイレージは, pHが5.1および総有機酸含量に占める酢酸比が47%と高く, またVBN/TNが2.4と極めて低いことを特徴とする発酵品質を示し, 硝酸・亜硝酸態窒素含量が0.01%以下と極めて低く, また乳牛による採食が確認された.試験2の結果, 7月, 8月および9月調製ノットグラスサイレージの発酵品質は, pHがそれぞれ5.2, 5.7および5.3, 総有機酸含量に占める乳酸比がそれぞれ79%, 27%および55%, 同酢酸比がそれぞれ16%, 50%および45%を示し, またVBN/TNがそれぞれ7.9, 25.8および12.7を示したことから, ノットグラスサイレージの発酵品質は調製時期により異なることが明らかとなった.また, 発酵品質は低水分ほど良質となる傾向が認められた.硝酸・亜硝酸態窒素含量は貯蔵中に50~90%以上が消失したため, すべて0.02%以下の低い値を示した.採食性についても特に問題は認められなかった.以上より, 水田において窒素を大量に投入して栽培したノットグラスのロールベールサイレージは貯蔵飼料として利用可能であると考えられる.

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