日本禁煙学会雑誌
Online ISSN : 1882-6806
ISSN-L : 1882-6806
原著
配偶者からの受動喫煙が発症に関与したと考えられた脳静脈血栓症の一例
白石 渉阿河 祐二
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 16 巻 2 号 p. 38-41

詳細
抄録

 症例は52歳女性である。頭痛と嘔気を主訴に当科を受診した。頭部画像検査で上矢状静脈洞に血栓を認め、脳静脈血栓症の診断のもと、入院加療を行った。各種の血栓素因を検索したが明らかな原因を認めなかった。患者は非喫煙者であるが、夫が喫煙者であり、尿中コチニン濃度を測定したところ上昇を認め、受動喫煙状態が確認された。受動喫煙が脳静脈血栓症に関与した可能性を考え、夫の禁煙指導を行い、現在まで再発はない。脳静脈血栓症は血栓傾向を背景に生じる中枢神経疾患で、時に脳出血、脳梗塞やけいれんなどの重大な症状を呈する。脳静脈血栓症のリスク因子には担癌患者や経口避妊薬の使用が知られているが、喫煙に関しては現在まで確実なエビデンスが得られていない。しかし、メタアナリシス研究では、喫煙が脳静脈血栓症のリスクである傾向が示されている。検索した範囲では、受動喫煙が関与したと考えられる脳静脈血栓症の報告は過去になく、症例の蓄積が必要と考えられたため報告する。

著者関連情報
© 2021 特定非営利活動法人 日本禁煙学会
前の記事
feedback
Top