【目 的】 医学生における加熱式タバコの普及状況と喫煙環境の変化による禁煙効果を検討した。【方 法】 S大学医学部全学生713名に質問調査票を用いて調査した。第1回調査は加熱式タバコを含む喫煙状況、第2回調査は喫煙場所の遠方移転前後での喫煙の継続と喫煙回数を質問し、解析を行った。【結 果】 第1回調査では630人(回収率88.4%)から調査票が回収され、有効回答数553人中38人が喫煙者で、その52.6%が加熱式タバコを喫煙し、喫煙理由としては「紙巻きタバコより害が少ない」が最多だった。また、喫煙場所の遠方移転前後の紙巻・加熱式タバコの喫煙率は8.9%から7.2%、喫煙場所に行く回数の中央値は4.25回から2.00回と有意に減少した。【考 察】 医学生でも加熱式タバコについて誤った認識を有するため教育が必要である。喫煙場所の遠方移転による利便性の低下が喫煙回数の減少および喫煙率の低下につながったと考えられる。【結 論】 医学生の加熱式喫煙者の割合は全国と同様だった。大学における喫煙環境の制限が学生の禁煙行動につながった。
症例は52歳女性である。頭痛と嘔気を主訴に当科を受診した。頭部画像検査で上矢状静脈洞に血栓を認め、脳静脈血栓症の診断のもと、入院加療を行った。各種の血栓素因を検索したが明らかな原因を認めなかった。患者は非喫煙者であるが、夫が喫煙者であり、尿中コチニン濃度を測定したところ上昇を認め、受動喫煙状態が確認された。受動喫煙が脳静脈血栓症に関与した可能性を考え、夫の禁煙指導を行い、現在まで再発はない。脳静脈血栓症は血栓傾向を背景に生じる中枢神経疾患で、時に脳出血、脳梗塞やけいれんなどの重大な症状を呈する。脳静脈血栓症のリスク因子には担癌患者や経口避妊薬の使用が知られているが、喫煙に関しては現在まで確実なエビデンスが得られていない。しかし、メタアナリシス研究では、喫煙が脳静脈血栓症のリスクである傾向が示されている。検索した範囲では、受動喫煙が関与したと考えられる脳静脈血栓症の報告は過去になく、症例の蓄積が必要と考えられたため報告する。
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