脳卒中
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原著
AGTRL1遺伝子の一塩基多型(SNP)が脳梗塞の発症に及ぼす影響
秦 淳久保 充明二宮 利治米本 孝二松下 知永北園 孝成井林 雪郎飯田 三雄中村 祐輔清原 裕
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2008 年 30 巻 6 号 p. 891-896

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抄録
背景と目的:脳梗塞の遺伝要因はほとんど知られていない.そこで,我々は52,608カ所の一塩基多型(SNP)マーカーを用いたゲノムワイド関連解析を行い,脳梗塞関連遺伝子の探索を試みた.
方法と結果:脳梗塞患者群1,112名と性・年齢を対応させて選択した1,112名の対照群を用いて,2段階のスクリーニングを行った.このスクリーニングにより同定された脳梗塞関連候補領域の1つに対して詳細な連鎖不平衡解析を行ったところ,AGTRL1遺伝子の転写調節領域に位置するSNP rs9943582(-154 G/A)が脳梗塞と有意な関連を示した(オッズ比1.30, 95%信頼区間1.14∼1.47, p=0.000066).この遺伝子の機能解析で,SNP rs9943582を含むDNA領域には,脳梗塞になりやすいG型の場合には転写因子Sp1の結合を認めたが,脳梗塞になりにくいA型の場合にはSp1の結合がみられなかった.また,リアルタイムPCRおよびルシフェラーゼアッセイにより,Sp1の過剰発現がAGTRL1の転写を誘導することが示された.さらに,福岡県久山町の住民を14年間追跡したコホート研究では,このSNPのGG型は他の遺伝子型と比べ脳梗塞発症のリスクが有意に高かった(ハザード比2.00, 95%信頼区間1.22∼3.29, p=0.006).
結論:AGTRL1のSNP rs9943582は脳梗塞の有意な遺伝的危険因子であった.
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© 2008 日本脳卒中学会
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