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浜田 恭輔, 町田 明理, 牧野 隆太郎, 森 拓馬, 山下 ひとみ, 有水 琢朗, 谷口 歩, 濱田 陸三, 神田 直昭
論文ID: 11164
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/10/04
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症例は73歳男性.起床時に左共同偏視,右片麻痺および全失語に気付かれ,救急搬送された.超急性期脳梗塞の診断で,機械的血栓回収療法を施行する際に左ICA無形成が判明した.左後交通動脈(posterior communicating artery: PcomA)の閉塞を認め,同血管を主要な側副血行路として,左大脳半球領域は灌流されていると判断した.左VAを経由して,閉塞していた左PcomAへアプローチし,同血管の再開通を得て,症状の改善が得られた.ICA無形成は稀な破格で0.01%未満の発症頻度とされる.通常は無症候性だが,主要な側副血行路の閉塞により症状が顕在化する.頭部CTによる頚動脈管の有無の確認や,側副血行路の把握が重要である.通常とは異なる経路でのデバイス誘導が必要な場合があり,デバイス選択の配慮,また潜在的な動脈瘤や動脈硬化性病変の存在に注意した慎重な操作が求められる.
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安部 大介, 桑城 貴弘, 林田 寛之, 有水 遥子, 水戸 大樹, 今村 裕佑, 村谷 陽平, 溝口 忠孝, 田川 直樹, 森 興太, 杉 ...
論文ID: 11160
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/09/27
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症例は86歳の女性.発熱および意識障害を呈した肺炎球菌性髄膜炎に対して,抗菌薬とデキサメタゾンによる治療を開始した.髄膜炎症状は改善したが,四肢の麻痺が出現し,発症7日目の頭部MRIで多発する脳梗塞病変を認めた.D-dimer 49.8 µg/mlと著増していたが,心原性脳塞栓症を疑わせる所見はなく,髄膜炎に伴う頭蓋内限局性のびまん性脳血管内凝固(diffuse cerebral intravascular coagulation)が原因と考えられた.抗凝固療法を開始後は脳梗塞の再発はなく,脳主幹動脈の狭窄や血管壁の増強効果も認めず,血管攣縮や血管炎は否定的であった.細菌性髄膜炎に伴う脳梗塞の治療法は確立されていないが,diffuse cerebral intravascular coagulationの病態に対しては抗凝固療法が有効である可能性が示唆された.
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前山 元, 井戸 啓介, 原田 亜由美, 横溝 明史, 上床 武史, 溝上 泰一朗, 髙島 洋, 松本 健一
論文ID: 11155
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/09/14
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【背景および目的】中大脳動脈M2閉塞に対する脳血栓回収療法(MT)の有効性や安全性は確立されていない.M2急性閉塞におけるMTの治療成績を検討し,有効性と安全性を明らかにすることを目的とした.【方法】2014年3月から2022年1月の間に当院でM1あるいはM2閉塞と診断し,MTを行った症例を抽出した(M1:93例,M2:68例).M2閉塞におけるMTの有効性や安全性を検討した.【結果】M1群でTICI≥2bの再開通率が高く(90.3% vs 73.5%),治療3カ月後の転帰良好(mRS: 0–2)の割合は,両群共に有効再開通が得られた場合に高かった.M2群で頭蓋内出血率が高く(14% vs 38.2%),特にpass回数が多い症例や,1回でもstent retriever単体で手技を行った症例でSAHの発症率が高かった.【結論】M2においてもMTは有効だが,頭蓋内出血率が高く,治療における対策が求められる.
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山田 大輔, 宮崎 貴則
論文ID: 11165
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/09/12
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81歳女性.意識障害を主訴に当院に搬送された.両側の眼瞼下垂と眼球運動障害を認め,complete ophthalmoplegia(CO)を呈していた.頭部MRI検査により,中脳傍正中から両側視床の脳梗塞を認め,それらに起因した動眼神経核障害とpseudo abducens palsy(PAP)と診断した.抗凝固薬を導入し,リハビリを開始したが,非閉塞性腸管虚血症と誤嚥性肺炎を発症し,第21病日に永眠された.中脳梗塞におけるCOは稀であり,外転神経障害を伴わずに外転障害を呈するPAPという病態を呈する.これは,輻輳を抑制するニューロンの障害に起因する病態である.また,過去の報告症例からは,生命予後も不良である可能性が高いため,このような特徴的な所見を認めた場合は,早期に病態を理解し,患者家族への適切なインフォームドコンセントが必要である.
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植村 順一, 山下 眞史, 八木田 佳樹, 井上 剛
論文ID: 11159
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/09/05
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54歳,女性.COVID-19発症9日後に突然,喚語困難と右手の脱力が現れた.頭部MRIで左中大脳動脈領域に急性期脳梗塞巣,MRAで左中大脳動脈M1–M2移行部の描出が不良だった.rt-PA療法を施行.投与開始直後に喚語困難と右片麻痺は改善し,1時間後の頭部MRAでは左中大脳動脈は再開通していた.経頭蓋超音波検査では右左シャント陽性,下肢静脈エコー検査では左ヒラメ静脈に器質化した等輝度血栓があり,隔離解除後に施行した経食道心エコー検査ではGrade IIIの卵円孔開存,心房中隔瘤を認めた.奇異性脳塞栓症と診断,アピキサバン内服を開始し,卵円孔閉鎖術を施行した.現在まで再発なく,良好な転帰である.COVID-19に奇異性脳塞栓症を発症した報告は少なく,発症機序と治療について考察し,報告する.
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金 茂成, 角本 孝介, 三小田 享弘, 齋藤 尭也, 田中 恒輝, 荻野 景規
論文ID: 11152
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/08/08
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【背景と目的】脳梗塞急性期再灌流療法は,発症から治療開始までが短いほど良好な予後が得られるが,その実施率と治療開始時間までの短縮がまだ十分とはいえない.院内体制整備が終了した後に脳卒中ホットライン(stroke hotline: S-Hot)を導入し,治療介入率の向上と治療開始までの時間短縮に対する効果を検証した.【方法】2021年6月から2022年12月までに再灌流療法を施行した患者をS-Hot群と非S-Hot群に分類し,後方視的に検討した.【結果】S-Hotの運用による再灌流療法は,それ以外よりも約2倍の実施率であった.救急隊の現場到着~来院の時間,来院~t-PA静注療法の時間,来院~機械的血栓回収療法開始の時間は短かったが,有意差があったのは現場到着~来院の時間のみであった.【結論】S-Hotの導入で発症~治療開始の時間短縮に有効であったが,院内の体制整備も不可欠である.
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宮嵜 健史, 姫野 隆洋, 宮崎 裕子, 郡 隆輔, 井上 智之, 佐藤 恒太, 佐藤 達哉, 福嶋 朋子, 大田 慎三
論文ID: 11142
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/07/25
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【背景と目的】アテローム血栓性脳主幹動脈閉塞(AT-LVO)に対する急性期脳血管内血行再建術(ENER)時のrt-PA静注療法(IV rt-PA)併用や24時間以内の抗血栓薬追加投与の影響は明確でない.当院でENERを施行したAT-LVOに対するIV rt-PAと24時間以内抗血栓療法の影響を検討した.【方法】発症4.5時間以内に受診しENERを施行したAT-LVO 60例を,IV rt-PA併用群26例,非併用群34例,に分け後方視的に検討した.【結果】有効再開通率はIV rt-PA非併用群で有意に高いが90日後転帰良好例に差はみられなかった.24時間以内抗血栓薬投与の有無でも頭蓋内出血合併率や90日後転帰良好例に差はみられなかった.【結論】ENERを施行したAT-LVOにおいて,IV rt-PAとその24時間以内の抗血栓薬療法は出血性合併症率や90日後転帰に影響を与えなかった.
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木下 直人, 入江 南帆, 岸 彩夏, 佐々木 健太, 阿部 貴文, 猪川 文朗, 荒木 睦子, 越智 一秀
論文ID: 11157
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/07/25
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症例は63歳女性.頭痛やめまいを発症し,その5日後に痙攣発作のため当院に搬送された.頭部CT検査で右側頭葉皮質下出血を認め,造影CT検査で右横静脈洞に脳静脈血栓症を認めた.血液検査では高度の小球性貧血を呈し,小腸ダブルバルーン内視鏡検査により消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)からの消化管出血が原因であると診断した.さらに全身の皮膚には軟性の小腫瘤が多発しており,皮膚科にて神経線維腫症1型(neurofibromatosis type1: NF-1)と診断された.NF-1は皮膚障害や腫瘍性疾患,脳血管障害などの多臓器症状を呈する常染色体顕性遺伝性疾患であり,GISTはNF-1にしばしば合併する.貧血は脳静脈血栓症のリスクであり,NF-1に血栓症が合併した場合には,消化管出血の精査が重要である.
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淺野 紘史, 向田 直人, 込山 和毅, 和田 元, 若林 和樹
論文ID: 11149
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/07/20
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89歳男性,突然の左上下肢麻痺を発症し,約40分で当院へ救急搬送された.来院時,JCS 2, 右共同偏視,左上下肢の重度麻痺を認め,NIHSS 21点であった.CTで右M1にhyperdense MCA signを認めたが,早期脳虚血性変化は認めなかった.心電図ではST上昇を認め,急性心筋梗塞に伴う心原性脳塞栓症と診断した.rt-PA静注療法は見送り,急性心筋梗塞に対する経皮的冠動脈形成術を行い,続いて脳血管撮影を行った.右中大脳動脈M1近位部閉塞を確認,血栓回収療法を行い,完全再開通が得られた.穿刺から再開通までは73分であった.治療後は左上下肢挙上可能となり,mRS 3で転院した.両疾患を合併した場合,治療の順序は症例ごとに検討が必要であるが,本症例は急性心筋梗塞の重症度が高いと判断し,優先して治療した.単純CTのみで診断しrt-PA静注療法を見送ったことで,治療時間短縮につながった.
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野中 裕康, 齋藤 靖, 白石 有輝, 丸山 学二, 徳山 勤, 天神 博志
論文ID: 11140
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/07/13
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遠隔の腫瘍からの流出静脈が,硬膜動静脈瘻(DAVF)に流入している稀な症例を経験したので報告する.症例は77歳,女性.急速に増悪する両側結膜充血,複視を主訴に入院となった.脳血管撮影で,主に左外頚動脈系からshuntを有し,両側後頭蓋窩系および両側上眼静脈へ流出する左海綿静脈洞部のDAVFと診断した.またMRIで左蝶形骨部に髄膜腫を疑う腫瘍を認めるも,こちらは経過観察とした.DAVFに対し経静脈塞栓術を行ったが,術後15日目に左眼症状の増悪を来した.脳血管撮影で,shuntの残存に加え,前述の腫瘍からの流出静脈が拡張した左上眼静脈への流入を認めた.残存するshuntおよび腫瘍への栄養血管に対する塞栓を行い,症状は改善した.本症例の初回治療後の再発は,不十分な塞栓が主な原因と考えたが,再発という経過を通し,腫瘍からの流出静脈の影響を推測し,同様の解剖学的特徴を有する症例への治療上の注意を考察した.
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水戸 大樹, 松岡 幹晃, 清原 卓也, 由比 智裕, 熊井 康敬, 杉森 宏
論文ID: 11143
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/07/12
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症例は90歳女性.心房細動に対して,アピキサバンを内服していた.意識障害と右片麻痺のため搬送され,頭部MRIで左後大脳動脈閉塞と同領域に急性期脳梗塞を認めた.大動脈精査の造影CT検査で,右大動脈弓,異所性左鎖骨下動脈に伴うKommerell憩室を認め,憩室内に血栓が示唆される造影欠損を認めた.アピキサバン内服中だったため,Kommerell憩室内の血栓による脳梗塞の可能性が高いと判断した.Kommerell憩室は大動脈弓発生過程での先天性奇形であり,合併症の頻度が高い.また,右大動脈弓を合併することが多く,右大動脈弓の精査から偶然見つかることが多いが,本症例は90歳まで未指摘だった.Kommerell憩室の脳合併症は,破裂や解離によることは想定されるが,Kommerell憩室内血栓で脳梗塞を来した報告は調べた限りなく,稀な1例を経験したため報告する.
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藤井 照子, 久保田 叔宏, 林 俊彦, 渡辺 俊樹, 笠原 一郎, 栢森 高, 唐鎌 淳, 高田 義章
論文ID: 11146
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/07/12
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浸潤型副鼻腔アスペルギルス症に,脳膿瘍と短期間に増大と破裂を繰り返す真菌性動脈瘤を併発した高齢者の1例を報告する.症例は83歳女性.突然の意識障害にて当院に緊急搬送となり,頭部CTとMRIにて蝶形骨洞内の膿瘍が骨破壊を伴い頭蓋内に浸潤し,脳室への穿破を伴う脳膿瘍を形成する所見を認めた.入院後,意識状態の悪化を認め,SAHの所見と膿瘍近傍に内頚動脈瘤の出現を認めた.水頭症に対して脳室ドレナージ術を行い,髄液培養でアスペルギルスが同定されたため,真菌性の脳膿瘍による動脈瘤と判断し,ボリコナゾールの投与を開始した.いったん神経所見は改善したが,再度,SAHと,内頚動脈瘤の増大を認めた.抗真菌薬の加療を継続したが,心不全,腎不全の悪化あり,死亡に至った.剖検を行い,蝶形骨洞の膿瘍から脳実質内,内頚動脈瘤壁までアスペルギルス菌糸を認め,一連の疾患はアスペルギルス感染によるものと明示された.
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野原 聡平, 阿部 悟朗, 伊藤 理, 鈴木 聡
論文ID: 11144
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/06/19
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症例は60歳男性.約2カ月前に右前大脳動脈(ACA)のA2閉塞による急性期脳梗塞で12日間入院していた.仕事中に軽度の右片麻痺,遂行機能障害が出現し,左MCA M1近位部閉塞による急性期脳梗塞で再入院した.高分解能MRIの血管壁イメージング(VWI)で左MCA M1近位部の閉塞部位に全周性の壁肥厚を認めたことから中枢神経系血管炎が疑われ,FilmArray髄膜炎・脳炎(ME)パネルで検査したところ,水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の核酸が検出された.先行する発疹はなかったがVZV血管症と考え,アシクロビル点滴とプレドニゾロン内服で治療し,症状は改善した.造影VWIは閉塞部位で壁肥厚と造影効果がみられた.同部位は治療後9週間後に壁肥厚と造影効果の減弱がみられ,治療後3カ月半後のMRAで再開通がみられた.本症例はMEパネルがVZV血管症のより早期の診断に役立ち,またVWIが診断と予後予測に有用であった.
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齋藤 孝光, 石川 敏仁, 海老原 研一, 遠藤 勝洋, 遠藤 雄司, 佐藤 直樹, 太田 守
論文ID: 11148
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/06/19
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前下小脳動脈末梢部に発生する動脈瘤は極めて稀であり,これまでclipping術やtrapping術,母血管閉塞術が施行されてきた.今回,meatal loopに発生した破裂前下小脳動脈瘤に対し,血管内治療を施行し,良好な結果を得られた症例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.突然の頭痛で発症し,後頭蓋窩に厚いくも膜下出血と,動脈解離が疑われる右前下小脳動脈末梢部動脈瘤を認めた.母血管塞栓術を企図して血管内治療を行ったが,結果的に瘤内塞栓術を施行した.術後は聴力障害や顔面神経麻痺等の神経学的異常所見は認めなかった.経過観察目的の脳血管撮影では動脈瘤の再発は認めず,右前下小脳動脈の血流も温存されていた.前下小脳動脈末梢部動脈瘤に対する治療では,聴力温存や,新規梗塞巣の発症率を下げる点において瘤内塞栓術は有用であるが,再発の可能性を十分に考慮し,定期的な血管評価は必須である.
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羽田 栄信, 池田 宏之, 額田 遼太郎, 赤池 夏樹, 大薄 卓也, 上里 弥波, 紀之定 昌則, 黒﨑 義隆, 沈 正樹
論文ID: 11127
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/06/13
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患者は78歳女性で,左片麻痺を契機にかかりつけ医で脳梗塞と診断され,当院に搬送された.到着時NIHSSは15点,前医で撮像したMRAで右M1閉塞を認め,DWI-ASPECTSは8点であった.血栓回収療法で白色血栓を回収し,完全再開通を得たが,左片麻痺は改善しなかった.第2病日,意識障害の進行を認め,NIHSSは19点,頭部MRAで再度右M1閉塞を認め,DWI-ASPECTSは5点であった.2回目の血栓回収療法を行い,再度白色血栓を回収し,M1再開通を得た.術後の体幹部造影CTで進行性膵がんが見つかり,Dダイマー高値と血栓の性状を踏まえ,1回目のM1閉塞の発生機序はがん関連塞栓症と判断した.患者は第39病日に原疾患により死亡した.がん関連脳主幹動脈閉塞は,凝固亢進状態に伴い,血栓回収療法後の短期間に血管内皮損傷のある再開通部位が再閉塞する可能性があるため,慎重な経過観察が必要である.
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松田 知大, 佐藤 浩一, 宮本 健志, 榎本 紀哉, 花岡 真実, 仁木 均, 松崎 和仁
論文ID: 11145
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/06/08
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早期公開
二重起始後下小脳動脈(double origin of PICA: DOPICA)は稀な解剖学的変異であり,動脈瘤を合併しやすい.今回我々は,破裂PICA動脈瘤をコイル塞栓し,経過中にPICAごと閉塞したが,DOPICAの他方の起始部からの側副血流により虚血を免れた症例を経験したので報告する.症例は35歳男性でめまい,嘔気,頭痛あり,頭部CTにてSAHを認めた.DSAで右PICAにside wall type動脈瘤を認め,コイル塞栓術を行った.動脈瘤のみ塞栓し,親動脈は温存でき,術後合併症や症状なく経過した.術後7日後のMRIでは新規脳梗塞はなかったが,MRAで動脈瘤ごとPICA起始部の閉塞を認めた.DSAでは異なる箇所から起始するPICAが側副循環として働き,PICA遠位部の灌流が補われていた.DOPICAのPICA動脈瘤では,コイル塞栓術後に他方のPICAが側副循環として役割をもつと考えられる.
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西原 琢人, 梶本 隆太, 大谷 直樹, 稲原 裕也, 大滝 遼, 小林 真人, 勝原 隆道, 吉野 篤緒
論文ID: 11131
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/06/02
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テント部硬膜動静脈瘻(TDAVF)は,脳実質内出血やくも膜下出血で発症して脳実質損傷を生じることが多く,急性硬膜下血腫(ASDH)の単独発症は非常に稀である.今回我々は,後頭蓋窩ASDHで発症したTDAVFに対して,発症早期に直達手術にて転帰良好であった症例を経験したので報告する.症例は29歳男性,突然の頭痛と嘔吐を生じたため,当院に救急搬送された.頭部CTで右後頭蓋窩にASDHを認めた.脳血管撮影では右テント切痕部にシャント部があり,静脈逆流および静脈瘤の形成を有するTDAVFの所見を認めた.血管内治療では,シャント部へのマイクロカテーテルの誘導が困難で,直達手術によりシャント部の完全閉塞が得られた.脳実質損傷を伴わない後頭蓋窩ASDH単独発症のTDAVF患者では,血腫除去および導出静脈におけるシャント部の離断を同時に施行でき,かつ根治性が高い直達手術の有用性が示唆された.
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瀧野 透, 西野 和彦, 佐藤 太郎, 佐竹 大賢, 佐藤 裕之, 小泉 孝幸
論文ID: 11129
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/05/31
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早期公開
Persistent primitive proatlantal artery (PPPA) type Iを伴う症候性頚部内頚動脈狭窄症の1例を報告する.症例は77歳,女性.全失語と重度右半身麻痺で来院した.拡散強調画像で左大脳に分水嶺梗塞と左頚部内頚動脈に高度狭窄を認め,狭窄部は内頚動脈から分岐するPPPAの近位部であった.病変部は粗大な不安定plaqueを有し,狭窄が進行していたため,頚動脈ステント留置術を行う方針とした.PPPA経由で後方循環にdebrisが飛散することが懸念されたため,意図的にPPPAをコイルで閉塞した後にCASを行った.原始血管吻合を伴う症例に対するCASでは,後方循環系への虚血リスクを考慮する必要があると考えられた.
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宮田 貴広, 稲桝 丈司, 伊藤 章子, 斎藤 克也, 真柳 圭太, 中務 正志, 市川 誉基, 吉井 雅美, 大島 壮生, 冨保 和宏
論文ID: 11123
発行日: 2023年
[早期公開] 公開日: 2023/05/26
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早期公開
当院において,2010~2019年の10年間で運転中発症かつ目撃のある事故を起こした急性期(発症≤24h)脳梗塞9例中,2例で機械的血栓回収術(MT)が施行された.MTでは可及的時間短縮が必要だが,事故後症例では時間短縮の弊害となる行為が存在する.上記2例を後方視的に検討,時間短縮における課題を同定することを研究目的とした.事故発生~再開通までの時間経過は,①事故発生~病着,②病着~穿刺,③穿刺~再開通の3つに分類できる.①では,脊椎保護に要した時間の他,事故処理という社会的行為も早期発見・搬送の妨げとなった.②では,全身外傷除外目的で行った画像検査や頭部MRI施行に時間を要した.院内体制の整備により②における時間短縮は可能であり,ハイブリッド救急初療室導入等の代替手段も考慮される.今後も安全を担保しつつ,時間短縮を図るという二重の目標に向け,経験の蓄積が必要である.
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