脳卒中
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原著
  • 長谷川 秀, 戸高 健臣, 甲斐 豊, 寺崎 修司, 岡野 雄一, 山村 理仁, 武笠 晃丈, 河野 淳一, 内田 和孝, 横田 勝彦, 吉 ...
    2025 年47 巻5 号 p. 275-283
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】Information and communication technology(ICT)を用いた脳卒中患者の搬送システムを考案し,適切な施設に迅速に搬送できるかを多施設で前向き臨床研究を行なった.【方法】ICTとして,脳卒中病型予測ツールJapan Urgent Stroke Triage-7(JUST-7)と医療関係者間コミュニケーションアプリJoinを活用した.現場で脳卒中が疑われた患者に対して,救急隊が入力したJUST-7のデータをJoinに添付し,救急隊と通信指令本部,primary stroke center(PSC)やPSCコア施設で共有して,フローに従い搬送先を決定した.【結果】脳卒中患者のうち,PSCコア施設搬送基準を満たした40名のPSCコア施設への直接搬送率は82.5%だった.Large vessel occlusion(LVO)患者はICT使用前と比べて使用後は,119通報覚知からコア施設に搬入されるまで18分短縮する傾向だった.【結論】ICTを用いた搬送システムは,脳卒中患者を適切な施設に迅速搬送できる可能性があり,脳卒中地域医療連携のdigital transformation(DX)となりうる.

  • 田鍋 拓也, 藤山 雄一, 平川 陽
    2025 年47 巻5 号 p. 284-292
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/05/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】急性期脳卒中患者における継続的なリハビリテーション(リハビリ)は,機能的転帰の改善や合併症予防に重要である.本研究は,休日リハビリの導入が退院時機能的転帰や合併症発生率に与える影響を明らかにすることを目的とした.【方法】2021年4月から2024年3月に入院した急性期脳卒中患者402名を対象に,5–6日間のリハビリ(従来)群と従来に加えて休日にリハビリを導入した群(休日群)を後ろ向きに比較した.退院時機能的転帰(mRS),合併症発生率を調査し,傾向スコアマッチングを実施した.【結果】休日群は,良好な機能的転帰(mRS≤2)の割合が増加し(72.1% vs 57.8%,p=0.012),合併症の発生率が低下した(4.5% vs 14.9%,p=0.003).【結論】休日リハビリの導入は,機能的転帰の改善や合併症予防に有効であった.

  • 大野 信孝, 桒原 聖典, 秋山 光正, 川副 雄史, 森谷 茂太, 木下 和之, 本間 和貴, 早川 基治, 廣瀬 雄一
    2025 年47 巻5 号 p. 293-300
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/07/08
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】当院では2019年1月より診療放射線技師が機械的血栓回収療法(以下,血栓回収)のアシスタント業務を開始しており,診療放射線技師によるタスク・シフト/シェアの効果を本研究で検証した.【方法】2016年1月から2023年12月の間に当院で休日・夜間に内頚動脈,中大脳動脈M1部の閉塞に対して血栓回収を行った70例を対象とし,アシスタント業務導入前,アシスタント業務導入後と分け,患者背景因子,治療成績,予後,時間外労働時間を比較検証した.【結果】アシスタント業務導入前は20例,アシスタント業務導入後は50例であった.50例中39症例でアシスタント業務を行い,患者背景因子,治療成績,予後に差はなかった一方で,脳外科医の時間外労働時間は2018年以降減少した.【結論】今後は,タスク・シフト/シェアを推進するために院内教育体制の充実などが必要と考えられた.

  • 原山 永世, 宮原 優太, 田中 翔太, 山内 康太, 大﨑 正登, 荒川 修治
    2025 年47 巻5 号 p. 301-308
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/07/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】急性期脳卒中後の自動車運転再開の判断は難渋することが多い.運転再開可否の予測因子は,神経心理学的検査の報告が多く,発症前のフレイル評価の調査をした研究はない.本研究では,急性期脳卒中後の運転再開支援を受けた者を対象に運転再開可否に関連する要因を分析した.【方法】対象者は急性期脳卒中患者68名であった.二項ロジスティック回帰分析を用いて臨床評価,神経心理学的検査を共変量とし関連要因を分析しカットオフ値を算出した.また,関連要因を用いて運転再開の可否による感度と特異度を算出した.【結果】運転再開可否の関連要因は,注意障害,前頭葉機能障害,視空間認知障害,発症前フレイルであった.また,カットオフ値を参考に発症前フレイルを加えた予測では,運転再開の可否の感度は100%,特異度は88%であった.【結論】急性期脳卒中患者の運転再開を支援する際,神経心理学的検査に加え発症前フレイルの評価が重要である.

  • 白戸 弘志, 萩井 譲士, 大西 基喜
    2025 年47 巻5 号 p. 309-316
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/08/08
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】N-terminal pro-brain natriuretic peptide(NT-proBNP)および brain natriuretic peptide(BNP)は脳梗塞患者におけるparoxysmal atrial fibrillation(PAF)検出の予測因子だが,NT-proBNPはchronic kidney disease(CKD)の影響が懸念される.本研究は,CKDの有無による両マーカーのPAF検出能と性能差を検討した.【方法】脳梗塞患者438例(CKD群179例,非CKD群259例)を対象に,receiver operating characteristic(ROC)解析で性能差を比較し,導出したカットオフ値で2値化後,調整因子を加えロジスティック解析を行った.【結果】両マーカーの曲線下面積(area under the curve: AUC)に差は認めず,NT-proBNP高値はCKD群でオッズ比20.34,非CKD群で5.49,BNP高値はCKD群で5.86,非CKD群で9.89といずれも有意であった.【結論】両マーカーは,ROC解析によるAUCに有意差はなく,NT-proBNPおよびBNPはCKDの有無にかかわらずPAF検出の独立した予測因子だった.

症例報告
  • 皆川 大悟, 渡辺 茂樹, 土谷 大輔, 園田 順彦
    2025 年47 巻5 号 p. 317-322
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は83歳男性.入院8カ月前に抜歯処置を受け,入院6カ月前に脳梗塞で神経内科入院歴がある.今回左顎下腺炎で耳鼻咽喉科に入院し,造影CTで左外頚動脈の舌動脈分岐後に7.5 mm大の囊状動脈瘤を認め当科紹介となった.瘤内コイル塞栓術を行い,動脈瘤の消失を認めたが,術後に改めて撮像したMRIで両側大脳半球に多発微小脳塞栓を認め,経胸壁心臓超音波検査で僧帽弁に疣贅の付着を認めた.画像所見と臨床所見から,感染性心内膜炎と診断し抗菌薬加療を開始し,感染性心内膜炎に対する外科的治療のために転院となった.本症例は感染性心内膜炎もしくは顎下腺炎に合併した感染性動脈瘤と考えられた.感染性頚部外頚動脈瘤は極めて稀な病態である.頚部の感染性動脈瘤に対して,血管内治療は有効な治療法の一つである.

  • 一瀬 綾花, 山際 啓典, 呉村 有紀, 榊 孝之
    2025 年47 巻5 号 p. 323-329
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は71歳女性.神経線維腫症1型(neurofibromatosis type 1: NF-1)と診断されていた.無症候性の解離性頭蓋外内頚動脈瘤の経過観察中に,嚥下障害,嗄声を来たし受診した.精査で内頸動脈瘤の拡大を指摘され,治療介入を行う方針とした.治療方法決定のため内頚動脈血流遮断試験(balloon occlusion test: BOT)を施行し,虚血耐性を確認した.

    血管内治療の手技を用いてtrappingを行い良好な結果を得た.しかし,内頚動脈BOT部の新規解離発生が生じており,NF-1の血管脆弱性を再認識した.NF-1は中膜菲薄化や弾性板断裂による血管脆弱性のために血管病変を合併することが知られているが,血管脆弱性は治療介入時の方法の選択にも重要な影響を及ぼすと考えられた.本症例では動脈瘤の近位と遠位のコイル塞栓術を行うことで,動脈瘤が血栓化し早期からの症状改善が得られた.

  • 和田 隆秀, 小塩 媛子, 野瀬 崇博, 松岡 馨, 三木 綾子, 野原 哲人, 水間 啓太, 福岡 裕人, 村上 秀友
    2025 年47 巻5 号 p. 330-335
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/05/31
    ジャーナル オープンアクセス

    発作性心房細動に対してリバーロキサバンを内服していた69歳男性がめまいを主訴に救急外来を受診した.頭部MRIでは右小脳半球および虫部に梗塞内出血を伴う急性期脳梗塞を認めた.血液検査ではループスアンチコアグラントが陽性,経食道心エコーでは僧帽弁に疣贅を認めたことから,抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome: APS)に伴う非感染性心内膜炎による心内膜疣贅からの脳塞栓症と診断した.APSに対する第一選択薬であるワルファリンの内服拒否があったこととリバーロキサバンの内服下で脳塞栓症を発症していることを考慮し,二次予防薬としてエドキサバンとアスピリンを併用した.その後は脳梗塞の再発はなく経過し,脳梗塞発症の130日後に実施した経食道心エコーでは疣贅の縮小を認めた.APSによる心内膜疣贅に対して,ワルファリンが内服困難な場合にはエドキサバンとアスピリンの併用が有効である場合があり,心内膜疣贅を経食道心エコーで注意深く経過観察する必要がある.

  • 横山 大騎, 中村 道夫, 宮崎 格, 米山 サーネキー 智子
    2025 年47 巻5 号 p. 336-341
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/06/10
    ジャーナル オープンアクセス

    発症時の画像検査で小脳テント周囲の急性硬膜下血腫を主要所見とし,くも膜下出血を伴わない破裂脳動脈瘤の2例を経験した.症例1:57歳男性,MRIで大脳半球間裂,後頭蓋窩,小脳テントを中心に血腫を認めた.血管造影で右内頚動脈前脈絡叢動脈分岐部に後下方向き動脈瘤を認め,発症3日目にクリッピングした.症例2:62歳男性,小脳テント周囲に血腫を認めた.血管造影で右内頚動脈後交通動脈分岐部に後下方向き動脈瘤を認め,発症4日目にクリッピングした.2症例とも手術所見では内頚動脈瘤のdomeがテント切痕を越えて後床突起の硬膜に接しており,周囲に硬膜下血腫が認められ出血源と確定した.純粋な急性硬膜下血腫であっても動脈瘤の部位,dome projectionの検討から破裂動脈瘤の診断は可能と考えられる.

  • 祖父江 朋弥, 茶谷 めぐみ, 髙橋 賢吉, 山本 慎司, 久我 純弘, 大西 宏之
    2025 年47 巻5 号 p. 342-346
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    [早期公開] 公開日: 2025/07/15
    ジャーナル オープンアクセス

    無症候性脳梗塞を契機に診断され,短期間で致死的な経過を辿った血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP)の症例を報告する.症例はこれまでに明らかな既往歴のない82歳女性で3日前からの頸部の違和感で前医を受診し,散在性脳梗塞を指摘され独歩で当院を受診.明らかな神経脱落症状を認めないが頭部MRIにて塞栓性の急性期梗塞を認め入院加療とした.入院後血液検査にて血小板減少,急性腎不全,溶血性貧血を認め患者も不穏状態となり専門的加療が必要と判断し高次医療機関へ転院となった.その後ADAMTS13活性の低下を認めたためTTPの診断となり,可及的に血漿交換を施行されたが受診の翌日に死亡した.無症候性の脳梗塞については微小血栓による塞栓症によるものと推察された.TTPは非特異的な症状のみで発症し,急激な病状の進行を来し,治療介入の遅延により致命的な経過を辿る可能性もあり注意が必要である.

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