【背景および目的】一過性黒内障および網膜中心動脈閉塞症(central retinal artery occlusion: CRAO)における,本邦の診療実態を明らかにするため,調査を行った.【方法】2024年8–9月に,日本脳神経内科血管治療研究会(the Japan Society of Vascular and Interventional Neurology: JSVIN)会員(222名)を対象にWebアンケートを実施した.【結果】82名(37%)が回答.架空症例に基づく質問では,一過性黒内障,CRAOとも受診時にMRIと頸動脈超音波検査を実施するという回答が多数で,有意所見がなくても60%・54%が入院を勧め,74%・78%が抗血小板薬を開始すると回答し,これらは脳梗塞合併や頸動脈狭窄を認める場合に上昇した.発症間もないCRAOに静脈血栓溶解療法を行うと回答したのは20%で,実施意向にはばらつきがみられた.【結論】脳卒中内科医の中で,一過性黒内障やCRAOに対して,脳梗塞予防を意識した検査や治療が行われていた.本結果は脳卒中診療医と眼科医の診療連携関体制を構築する上で基盤的な資料になる.
72歳男性.突然の感覚性失語で救急搬送となり,頭部CTで左側頭葉に周囲に低吸収域を伴う皮質下出血を認めた.造影MRIで左横静脈洞,左S状静脈洞の造影効果の欠損像を認め,静脈洞血栓症による静脈性高血圧が原因と疑った.第7病日のDSAでは上矢状静脈洞部の硬膜動静脈瘻を認めた(Borden type I, Cognard type I).脳出血発症12カ月後のMRIで左側頭葉に血管の異常集簇を認めたため,DSAを施行すると左横静脈洞部と左S状静脈洞部の硬膜動静脈瘻および左側頭葉に脳動静脈奇形が新規に発生していた.動静脈奇形に対して経動脈的および経静脈的塞栓術を施行し根治を得た.
症例は67歳男性.尿管結石で入院した際に安静時の血中酸素飽和度低下を認め呼吸不全を指摘されたが原因は判明せず在宅酸素療法が導入された.5カ月後,尿閉と歩行障害を来し入院,頭部MRIで延髄に異常を認め脳血管撮影で頭蓋頚椎移行部硬膜動静脈瘻(craniocervical junction dural arteriovenous fistula: CCJ dAVF)と診断された.嚥下障害と四肢麻痺,呼吸状態が急速に悪化したため人工呼吸器管理を行い緊急で流出静脈遮断術を施行した.術後,動静脈シャントは消失,症状は改善し人工呼吸器を離脱,入院前より呈していた呼吸不全も改善して在宅酸素療法も不要となり独歩で自宅退院となった.臨床経過と延髄呼吸中枢の観点から本症例で先行していた呼吸不全がCCJ dAVFの初発症状であった可能性があり文献的考察を加えて報告する.
症例は42歳女性.頭痛と,痙攣を認め搬送され,頭部MRIで上矢状静脈洞と周辺の皮質静脈の閉塞所見を認め,脳静脈血栓症(cerebral venous thrombosis: CVT)と診断した.抗凝固療法に加えて機械的血栓回収療法(mechanical thrombectomy: MT)を行い後遺症なく改善したが,数カ月後に硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistulas: DAVF)を続発した.MTで治療されたCVTに続発するDAVFの報告は非常に稀である.CVTの治療後においては定期的な画像フォローによって続発性DAVFの発生の有無を観察する必要性がある.
症例は48歳女性.来院当日からの頭痛・視力障害で受診.受診時全盲で,軽度の左下肢麻痺を認めた.脳MRI拡散強調画像で両側後頭葉を中心に高信号を認め,FLAIR画像で橋に高信号を認めた.脳MRAではすべての脳動脈が攣縮していた.可逆性脳血管収縮症候群と脳梗塞の合併を考え,エダラボン・ロメリジン・バイアスピリンなどで治療を開始した.また全身検索の結果,Basedow病の合併を認め,治療を追加した.当初5日ほどは脳画像の悪化を認めたが,以降は神経症状は緩徐に改善した.第35病日には左麻痺は消失,視力は手動弁レベルとなり,リハビリ転院となった.発症5カ月後の両眼視力は0.3となり,室内activities of daily living(ADL)は自立となった.甲状腺機能亢進症が脳血管の攣縮を誘発した可能性がある.
抗凝固療法が困難な椎骨動脈解離(vertebral artery dissection: VAD)に伴うvertebral artery stump syndrome(VASS)による反復性脳底動脈閉塞(basilar artery occlusion: BAO)に対し,逆行性母血管閉塞術(parent artery occlusion: PAO)で治療した一例を報告する.症例は54歳男性.左VADによるposterior inferior cerebellar artery(PICA)梗塞で入院中,意識障害を呈しBAOと診断された.右VA経由の血栓回収術で再開通を得たが,左VAはV1閉塞および側副血行によるV3以遠の造影遅延を認めた.出血性合併症および広範な梗塞のため抗凝固療法は導入できなかった.翌日にBAOが再発.VASSと診断し,再度の血栓回収後に右VAから逆行性に左V3へカテーテルを誘導,側副路流入部を含むstumpに対しコイルPAOを施行した.術後経過は良好であった.抗凝固療法が選択しにくいVAD関連VASSの反復BAOに対し,対側VAからの逆行性PAOは有効な治療選択肢である.