脳卒中
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原著
  • 稲桝 丈司, 冨保 和宏, 市川 誉基, 吉井 雅美, 大島 壮生, 宮田 貴広, 真柳 圭太
    2024 年 46 巻 4 号 p. 287-291
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/19
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】高齢化により独居高齢者数も急速に増加,独居脳梗塞患者の増加も予想される.2011年1月~2012年12月を前期,2021年1月~2022年12月を後期とし,10年間隔で独居者が急性期脳梗塞患者全体に占める比率,救助要請形式がいかに変化したかを当院データで比較.また,後期では大血管閉塞に対する機械的血栓回収療法が,独居者でどの程度施行されていたか調べた.【結果】前期では独居者比率は6.7%,後期では11.5%で相対比1.72と有意に増加( p=0.01).自力救助要請率は低下,後期で自力救助要請できたのは1/3程度であった.第三者救助要請率は上昇していた.後期では,大血管閉塞症例中33%で機械的血栓回収療法が施行されていた.【結論】今回示された独居脳梗塞患者数の増加は,今後も続くことが予想されるが,それにいかに対応すべきかは社会全体で共有すべき課題である.

  • 中島 一夫, 仲 元司, 西山 修, 高濱 充貴, 西森 栄太
    2024 年 46 巻 4 号 p. 292-299
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/27
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】単一施設での心房細動(AF)患者の死亡率の経時的変動と脳梗塞死に影響を及ぼす因子を,後ろ向きに検討した.【方法】AF患者を抗凝固療法黎明期(1983年1月1日~1999年12月31日)968例,ワルファリン確立期(2000年1月1日~2011年3月24日)566例と直接阻害型経口抗凝固薬導入期(2011年3月25日~2022年12月31日)479例に分け,観察期間別全死亡率と死因別死亡率を比較した.【結果】Fine and Grayの比例ハザードモデルを用いた検定にて,経時的な全死亡率の増加と脳梗塞死亡率の減少を認めた.脳梗塞死に影響を及ぼす因子の多変量解析にて,年齢,女性,持続性/永続性AF, 脳梗塞/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症既往が正の相関性を,抗凝固療法が負の相関性を示した.【結論】AF患者の脳梗塞死は経時的に減少し,抗凝固療法がその一因と考えられた.

症例報告
  • 山村 泰弘, 水野 颯, 松井 秀介
    2024 年 46 巻 4 号 p. 300-304
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/26
    ジャーナル オープンアクセス

    Twisted carotid bifurcation(TCB)とは,頸部において内頸動脈が外頸動脈の内側を走行している状態である.成因として先天性素因や,動脈硬化などによる後天性素因が考察されているが,いまだ明らかにはなっていない.今回舌骨の可動性により,繰り返しTCBが形成された症例を経験したので報告する.69歳女性,中等度の左内頸動脈狭窄に対して経過観察をしている.右総頸動脈分岐部の角度が初診時には正常走行を示し,1年後には約90度捻転してTCBを形成していた.翌年の所見では正常に戻り,また1年後には再度TCBを形成していた.画像を見直し,正常時には頸動脈は舌骨の外側を走行し,TCBの状態では舌骨の内側にあることが確認された.舌骨の可動性を考えると,本症例ではそれがTCBの成因となっているものと考えられた.

  • 吉田 研二, 柳原 普, 千田 光平, 赤松 洋祐, 小笠原 邦昭
    2024 年 46 巻 4 号 p. 305-308
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2024/01/16
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は52歳男性.37歳時に頭痛発症の左椎骨動脈解離に対し,保存的加療を受けた.左椎骨動脈の紡錘状拡大は残存したが,画像的変化は認めず経過していた.51歳時に進行性胃癌に対し,切除術を施行した.術後はTegafur/Gimeracil/Oteracil配合剤による化学療法を行ったが,複数の肝転移が明らかとなり,Ramucirumab+nab-paclitaxel併用療法へ変更した.間もなく強い頭痛を自覚し,頭部MRIで対側の右椎骨動脈に新たな動脈解離が明らかとなった.解離以降の右椎骨動脈は閉塞しており,また出血や虚血巣を認めなかったため,保存的に加療した.RAMおよび,同様の抗VEGF作用を有する分子標的治療薬のbevacizumabには大動脈解離の報告が散見されるが,椎骨動脈解離を発症した報告はない.一側の椎骨動脈解離の既往がある症例の対側椎骨動脈解離発症に,RAMの関連が疑われた.

  • 立澤 奈央, 森 達也, 山下 俊輔, 松木 泰典, 池田 充, 森川 雅史, 安部 裕子, 藤田 敦史, 篠山 隆司
    2024 年 46 巻 4 号 p. 309-315
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2024/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    潰瘍形成プラークに対する頚動脈ステント留置術後には,ステント外に造影剤が漏出するステント外残存潰瘍(residual ulceration: RU)を認めることが多い.RUは半年後に約半数が消失するが,術後脳塞栓症の原因となる可能性について報告されている.本研究では,潰瘍病変に対してCASPER stentを使用した場合のRU消失率および塞栓性合併症の発生率を検討した.2021年4月から2022年3月までの期間で,潰瘍形成を認めた11症例を対象とした.全例にCASPER stentを用い,術後3カ月時点のDSA所見を評価した.10例にRUを認め,3カ月後のRU消失率は78%であった.1年間の追跡で症候性脳梗塞の発生例はなかった.潰瘍病変に対するCASでは,CASPER stentの使用によりRUの高い消失率が得られた.

  • 大貫 亮慶, 小林 祐太, 亀野 力哉, 藤森 大智, 宗像 良二, 堀内 一臣, 生沼 雅博, 渡邊 善一郎
    2024 年 46 巻 4 号 p. 316-320
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2024/01/19
    ジャーナル オープンアクセス

    50歳代女性.午睡後の左上肢感覚障害で受診.MRI, MRAで右M2領域の急性期脳梗塞と診断,t-PA, 血栓回収は適応外であり,保存的加療.翌日MRAで閉塞部位は再開通していた.経胸壁心エコー,体幹部CT, ホルター心電図で塞栓源や不整脈なし.頚部MRAで有意狭窄なく,頚動脈エコーは未施行.ホルモン,各種抗体検査で異常なし.塞栓性梗塞とてDOAC開始となり,軽度感覚障害あるも独歩自宅退院.3カ月後同部位に脳塞栓が再発し入院.頚動脈エコー,CTAより右内頚動脈にcarotid web(CW)が疑われ脳血管撮影を施行,同部位に造影剤の鬱滞が見られた.CWに起因する再発塞栓性梗塞と診断,DAPTとし後日頚動脈ステント留置術を施行.その後は再発なく経過している.CWに起因する脳梗塞は再発リスクが高いとされる.本症例は抗凝固療法中に再発を来しており,若年の脳塞栓ではCWを見逃さず,適切に治療することが重要と思われた.

  • 忽那 史也, 荒田 昌彦, 足利 裕哉, 佐藤 和明, 徳田 昌紘, 岩永 洋
    2024 年 46 巻 4 号 p. 321-325
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2024/01/31
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は53歳女性.関節リウマチ診断から2カ月後に一過性の右上下肢麻痺,失語を発症した.症状が繰り返すことから一過性脳虚血発作(transient ischemic attack: TIA)が疑われ,精査目的に当科へ入院した.頭部MRIで,左前頭葉および頭頂葉の髄膜に造影効果を伴う拡散強調画像/FLAIR画像高信号を認め,関節リウマチの既往からリウマチ性髄膜炎が疑われた.髄液検査で,抗環状シトルリン化ペプチド抗体ならびに抗体価指数の上昇を認め,リウマチ性髄膜炎と診断した.ステロイドによる治療反応性は良好で,症状の再燃はなく,画像所見も改善が得られた.臨床経過ならびに診察所見のみでの診断は困難であり,頭部造影MRIや髄液中抗環状シトルリン化ペプチド抗体の測定が診断に有用であった.リウマチ性髄膜炎ではTIA様症状を呈することがあり,TIA mimicsとして念頭に置く必要がある.

  • 神津 実咲, 佐藤 健朗, 三森 雅広, 奥村 元博, 梅原 淳, 井口 保之
    2024 年 46 巻 4 号 p. 326-331
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2024/01/31
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は75歳男性.突然の回転性めまいと歩行障害で来院した.来院時より高CO2血症を認め,神経学的には構音障害,左右注視眼振,左顔面麻痺,嚥下障害,左カーテン徴候,左顔面と頸部以下右半身の表在感覚低下,左上下肢小脳性運動失調,左Horner徴候を認めた.頭部MRIでは,延髄左外側から橋下部左背側に及ぶ垂直方向の長大な梗塞を認め,MRAでは左椎骨動脈の閉塞を認めた.発症約9時間後に誤嚥性肺炎を生じ,発症約24時間後の夜間に突然の呼吸停止を来し人工呼吸器管理となった.延髄外側梗塞の中でも閂レベルよりも頭側に病変を含む場合,呼吸制御機構が障害され,かつ誤嚥を生じやすいとされる.本例は垂直方向に長大な病変を呈し,発症早期に重篤な中枢性呼吸障害と誤嚥性肺炎を伴った.延髄外側梗塞に伴う呼吸不全のメカニズムを考える上で貴重な1例と考え報告する.

  • 正村 啓二郎, 工藤 誠也, 南部 育, 宮下 勝吉, 東馬 康郎
    2024 年 46 巻 4 号 p. 332-336
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2024/02/09
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は43歳男性.突然の激しい頭痛の後,てんかん重積を起こし救急搬送された.CTで左シルビウス裂を中心にくも膜下出血および左頭頂葉に低吸収域を認めた.脳血管撮影上,出血源となる動脈瘤や血管奇形は認めなかったが,左頭頂葉に濃染像と,同部位に早期静脈描出を認めた.左頭頂葉病変は造影MRIでリング状の増強効果を呈し,これらの画像所見から悪性腫瘍が疑われたため,開頭腫瘍摘出術を施行した.病理診断にて悪性神経膠腫と診断され,術後化学放射線療法を施行した.稀ではあるが,くも膜下出血の原因として悪性神経膠腫の可能性があることを念頭に置くべきと考えられた.

短報
  • 岩本 宗矩, 大塚 喜久, 加藤 歩, 矢幡 悟大, 井村 隼, 岡村 有祐, 松本 賢亮
    2024 年 46 巻 4 号 p. 337-340
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/18
    ジャーナル オープンアクセス

    88歳女性.心不全・尿路感染症で入院し,末梢静脈カテーテルから抗菌薬を投与されていた.入院12日目に突然の意識障害・右片麻痺を呈した.頭部MRIで左前大脳動脈(ACA)・中大脳動脈(MCA)の境界域に拡散制限域があり,T2*強調画像(T2*WI)で同領域の皮質,脳溝に多発低信号を認めた.T2*WIの低信号にほぼ一致してCTで空気像があり,脳空気塞栓症と診断した.翌日,意識障害・片麻痺は改善し,CTの空気像とT2*WIの低信号も消失した.脳空気塞栓症は末梢静脈カテーテルのみ留置下の報告もあり,ACA・MCAの境界域に好発する.空気はT2*WIで信号消失し,少数ながら,本例と同様にT2*WIで多発低信号を認めた脳空気塞栓症の報告もある.末梢静脈カテーテル留置のみで,高侵襲な処置を行っていなくても,T2*WIで大脳皮質や脳溝に沿う多発低信号を認めた場合は,脳空気塞栓症を考慮すべきである.

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