抄録
要旨:症例は72歳女性.呂律困難,右外転運動麻痺,左水平眼振および左上下肢不全麻痺にて発症した.頭部CTにて右小脳橋角部に広がるクモ膜下出血を認め,脳血管撮影では右重複上小脳動脈のうち1本の遠位部に紡錘状の解離性動脈瘤が認められた.全身状態の改善後第10病日に動脈瘤コイル塞栓術を施行した.術後は右小脳梗塞を認めるも,特に新たな神経症状の悪化はなく,modified Rankin Scale 2の状態でリハビリテーションのために転院となった.解離性動脈瘤が重複上小脳動脈遠位部に発生する報告例はきわめて少なく,さらに破裂し,クモ膜下出血を来した例での治療の報告はまれである.本症例のような重複上小脳動脈では,末梢性解離性動脈瘤の再出血防止には,脳動脈瘤コイル塞栓術は安全かつ有効な方法であったと考えられる.