論文ID: 10504
脳塞栓症の最大の原因として心房細動が挙げられる.しかし,諸検査で心房細動を認めず動脈硬化巣を含めて塞栓源不明のままである脳塞栓症にもしばしば遭遇する.近年,この塞栓源不明の脳塞栓症(ESUS)がその病態を含めて注目されてきている.本研究では,急性期脳梗塞で入院し抗凝固薬投与が開始された患者について,心房細動を認め心原性脳塞栓症と診断できた症例と塞栓原不明のままであった症例に分けて,予後に差異を認めるか検討した.その結果,心原性脳塞栓症の方が塞栓源不明の脳塞栓症に比して有意に重症で,退院時ADL が不良の傾向であった.また1 年の追跡による累積脳梗塞再発率は2 群間でほぼ同等であったが,全死亡まで含めた予後は心原性脳塞栓症の方が不良であった.抗凝固薬による脳塞栓再発予防に心房細動の有無は影響しないが,長期予後は心原性脳塞栓症で不良となることが示唆された.