論文ID: 10689
要旨:顔面を首座とする視床痛は難治性で,内科的・外科的に有効な治療法の報告は極めて少ない.右視床に小梗塞を来した4 カ月後から左顔面(V1–3 領域,特にV2)に激しい灼熱痛を自覚し,内科的治療に反応がない症例で,患者の強い希望のため外科的治療を行った.まず三叉神経脊髄路核への刺激を狙って上位頸椎の脊椎硬膜外腔に電極を挿入し,試験刺激で下顎から頸部にかけてのパレステジアのみを認め,効果不十分であった.次いで視床破壊術を行う方針となったが,梗塞巣近傍を標的とした電気刺激では,Somatotopy に応じた顔面の刺激反応を認めなかった.そこで神経回路再構築を目的として小梗塞巣に標的を変更し凝固術を施行したところ,術後症状は劇的に改善し,2 年半以上除痛効果を認めている.