論文ID: 10747
要旨:可逆性後頭葉白質脳症(PRES)は,意識障害,痙攣,視野障害などの神経症状を伴い,主に両側の頭頂葉,側頭葉,後頭葉に可逆性の浮腫性変化を呈する病態である.今回我々は頸動脈内膜剝離術(CEA)後にPRES を発症した稀な症例を経験したため報告する.症例は69 歳男性で,左右ともにNASCET 法で85%以上の両側頸部内頸動脈狭窄症を指摘され,まず左CEA を施行し,その2カ月後に右CEA を施行した.術後過灌流が遷延していたところ,意識障害,痙攣,左同名半盲を発症し,MRI で右側頭葉優位に浮腫性変化を認めた.浮腫性変化はその後に両側大脳全域に広がり,症状とともに改善傾向を示した.症状,画像上所見ともに可逆性であり,PRES と診断した.CEA術後過灌流が遷延している状態に発症したこと,浮腫性変化が術側から始まり両側に広がったことから,CEA 術後過灌流がPRES 発症に大きく関与したと考えられた.