論文ID: 10856
要旨:症例は,開眼困難,発語不明瞭にて搬送された76歳,女性である.入院時,意識清明,両側開眼困難,垂直性注視麻痺,発語不明瞭であった.MRIにて両側視床内側梗塞と診断し,急性期加療を施行し,第2病日には開眼可能,神経症状は垂直性注視麻痺のみとなった.日常生活動作自立状態となった第5病日,病室で意識障害を発見され,それ以来,歩行中などでも急激な意識障害を繰り返すようになった.原因検索で原疾患以外の疾患を見出せず,原疾患に伴う発作性睡眠と診断.対症的にアマンタジンを投与し,著効した.傍正中視床病変では意識障害遷延を主体としてさまざまな症候が報告されているが,本疾患では,亜急性期にナルコレプシー類似の発作性睡眠を繰り返すという特徴的な症候で,本症候が傍正中視床梗塞の一つの症候として認識されるべきであること,また,アマンタジンが同疾患の意識障害の治療として期待できることを報告する.