論文ID: 11046
患者は76歳女性.突然発症の意識障害,右共同偏視,左片麻痺を来し,救急搬送された.MRIで右中大脳動脈閉塞を示唆する所見があったが,自然再開通により来院後40分で劇的な症状改善を認めた.その後,嘔吐したため,メトクロプラミド10 mgを急速静注したところ,約1時間後から口舌・四肢にジスキネジアが出現した.メトクロプラミドによる急性ジスキネジアと診断し,翌日からビペリデンを開始して,ジスキネジアは消退した.メトクロプラミドは代表的な制吐薬で,長期投与により遅発性ジスキネジアを惹起し得ることが知られるが,稀ながら本例のように,単回かつ通常量の経静脈投与でも,急性ジスキネジア等の錐体外路障害を呈する場合がある.脳卒中診療において,嘔吐は日常的に対処を求められる症状であるが,静脈内投与する場合は,緩徐に点滴投与してジスキネジア等の錐体外路障害予防に努めるべきである.