論文ID: 11127
患者は78歳女性で,左片麻痺を契機にかかりつけ医で脳梗塞と診断され,当院に搬送された.到着時NIHSSは15点,前医で撮像したMRAで右M1閉塞を認め,DWI-ASPECTSは8点であった.血栓回収療法で白色血栓を回収し,完全再開通を得たが,左片麻痺は改善しなかった.第2病日,意識障害の進行を認め,NIHSSは19点,頭部MRAで再度右M1閉塞を認め,DWI-ASPECTSは5点であった.2回目の血栓回収療法を行い,再度白色血栓を回収し,M1再開通を得た.術後の体幹部造影CTで進行性膵がんが見つかり,Dダイマー高値と血栓の性状を踏まえ,1回目のM1閉塞の発生機序はがん関連塞栓症と判断した.患者は第39病日に原疾患により死亡した.がん関連脳主幹動脈閉塞は,凝固亢進状態に伴い,血栓回収療法後の短期間に血管内皮損傷のある再開通部位が再閉塞する可能性があるため,慎重な経過観察が必要である.