論文ID: 11144
症例は60歳男性.約2カ月前に右前大脳動脈(ACA)のA2閉塞による急性期脳梗塞で12日間入院していた.仕事中に軽度の右片麻痺,遂行機能障害が出現し,左MCA M1近位部閉塞による急性期脳梗塞で再入院した.高分解能MRIの血管壁イメージング(VWI)で左MCA M1近位部の閉塞部位に全周性の壁肥厚を認めたことから中枢神経系血管炎が疑われ,FilmArray髄膜炎・脳炎(ME)パネルで検査したところ,水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の核酸が検出された.先行する発疹はなかったがVZV血管症と考え,アシクロビル点滴とプレドニゾロン内服で治療し,症状は改善した.造影VWIは閉塞部位で壁肥厚と造影効果がみられた.同部位は治療後9週間後に壁肥厚と造影効果の減弱がみられ,治療後3カ月半後のMRAで再開通がみられた.本症例はMEパネルがVZV血管症のより早期の診断に役立ち,またVWIが診断と予後予測に有用であった.