脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
8.重症くも膜下出血に対する治療戦略
軽度低体温療法および血管内手術を用いて
入江 恵子長尾 省吾河井 信行中村 丈洋
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 20 巻 6 号 p. 654-660

詳細
抄録

破裂脳動脈瘤による重症くも膜下出血患者を中心に,軽度低体温療法および血管内手術を用いた多角的治療を行った.動脈瘤破裂により大きな側頭葉血腫を形成し,術前に両側瞳孔散大し対光反射消失が認められ,従来救命困難と考えられた例において軽度低体温療法を併用してクリッピング術を行ない良好な結果を得た.また,脳血管攣縮に対しては,軽度低体温療法を行ないながら経皮的血管拡張術や塩酸パパベリン動注療法を行ない,CBFの良好な改善が認められた.一方,塩酸パパベリン動注療法によっても神経症状の改善が得られなかった例に軽度低体温療法を行ない,低体温施行中のCBFがcritical levelを推移したにもかかわらず復温後は良好に改善し,独歩退院可能であった例も経験した.しかし,軽度低体温療法で脳血管攣縮の進行を阻止することはできず,復温により攣縮が高度になった例も経験したので,今後さらに適応を含めた臨床検討が必要である.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本脳卒中学会
前の記事 次の記事
feedback
Top