脳には白質線維の方向による水の拡散のしやすさの違い(拡散異方性diffusion anisotropy)があり,条件を満たした撮像を行い,テンソルを用いて解析すると,白質による拡散異方性の程度(白質によりどれだけ水分子が白質の方向に沿って動きやすく,白質と直交する方向に動きにくいかの程度)が定量化でき,さらに白質線維の方向も知ることができる.
我々は拡散テンソルデータから白質線維による異方性を高速に追跡して拡散テンソルから見た"白質路"を描出するソフトを開発し,その臨床応用を行った.錐体路近傍の急性期脳梗塞においては,拡散テンソルtractographyにより,錐体路と梗塞との3次元的関係がより明瞭に描出され,予後予想に役立つことが示された.脳動静脈奇形などの脳血管障害,脳腫瘍でも病巣と錐体路との立体的把握に有用であった.拡散テンソルtractographyで抽出した特定の白質路を,異方性の示標で定量評価することで.変性疾患での特定の白質路の変化を敏感に捉えることもできた.