脳卒中
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無症候性脳梗塞とvascular depression
藤川 徳美
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2004 年 26 巻 4 号 p. 670-674

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抄録
1997年にAlexopoulosとKrishnanは脳血管障害に伴ううつ病(depression)を脳血管性うつ病(vascular depression;VD)と呼ぶことを提唱した.VDは脳血管障害が臨床所見(脳卒中発作の既往,局所神経徴候)もしくは検査所見(CT,MRI)にて認められるものを示し,1)脳卒中後にdepressionを生じる脳卒中後うつ病(post-stroke depression;PSD)と,2)うつ病患者においてMRIにて脳梗塞が発見されるMRI-definedVDに分類される.PSDは局所神経症状などの臨床所見とCTなどの検査所見の両方で脳梗塞の存在が確認される.MRI-definedVDは,MRIにて脳梗塞が発見されるが臨床所見では脳梗塞の存在が確認できない(脳卒中発作の既往がなく,局所神経徴候も存在しない)ものを指し,潜在性脳梗塞(silent cerebral infarction;SCI)を伴ううつ病と同じものである.感情や意欲に関連する神経回路の一部に脳梗塞が生じ,その脳梗塞病変がある閾値を超えて集積するとVDが発症するものと考えられる.VDにおいては脳梗塞病変の集積による器質的因子の関与が遺伝負因の関与や社会心理学的因子の関与より大きいものと考えられている.
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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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