脳卒中
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実験的梗塞脳の生化学的研究 (第2報)
中性脂質代謝と脳内macrophageの機能について
長山 正史工藤 玄恵青山 彰
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1984 年 6 巻 4 号 p. 425-433

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抄録

ラットに実験的脳梗塞巣を作成し, 経時的に各病巣の中性脂質代謝を検討した.とくに中性脂質の代謝の'場'および各病期 (病巣の新旧) での中性脂質の, 質的特徴'を中心に検討し, 以下の諸点を明らかにした.
1) 各病期に亘り中性脂質の増加が認められたが, これらはコレステロールエステル (ChE), トリグリセライド (TG), 遊離脂肪酸 (FFA) などから構成され, なかでもChEの増加が最も優位に認められた.2) 脳内macrophageを単離することにより, 中性脂質の代謝が主として同細胞内で行なわれており, 中性脂質の増加はmacrophage反応と相関し, 主として崩壊したmyelinなどに由来すると考えられた.3) 病巣の長期化につれ, FFAの相対的増加が認められた.ChE, FFAは病巣が極めて古くなり, macrophage反応がほとんどみられない病巣にてもなお残存することが証明された.4) 中性脂質の'質', とくにコレステロールエステルの構成脂肪酸は病巣の新旧と相関することが示唆された.すなわち病巣が古くなればなる程, 鎖長のより長い構成脂肪酸の割合が増すものと考えられた.5) 中性脂質の増加が脳梗塞巣の進展及び修復過程に重要な係わりを有することが示唆された.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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