後頭下開頭による血腫除去術を施行した橋出血の4症例と, 保存例で軽症および重症各1例ずつの諸検査結果を比較し, 橋出血に対する手術適応について検討した.急性期手術例 (3例) は全例術前の意識障害が強く, 呼吸状態も不安定だったが, 術後呼吸状態は全例改善し, 2例で意識の改善がみられた.亜急性期の1例では, 術後意識の著明な改善がみられた.保存例の重症例は脳幹死にいたり, 軽症例は意識清明となったが, 機能的回復は満足のいくものではなかった. (結論) 手術適応と考えられるのは, 聴性脳幹反応 (ABR) での悪化傾向や, CTで血腫増大がみられ, 脳室ドレナージのみでは2次性脳幹損傷を防ぎ切れないと判断される場合 (救命的適応), または少なくとも片側のABRが正常で, 意識の改善傾向がみられる場合 (機能的適応) 等が挙げられる.術式に関しては急性期には減圧も兼ねた後頭下開頭がより確実と考えられる.手術時期の決定や適応の選択にはABRと頭蓋内圧測定が非常に有用と考えられた.