抄録
センダイウイルス (SeV) の全ゲノムは1980年代に配列決定された. その際, cDNA解析によりP遺伝子からは二種類のmRNAが転写され, 一方のmRNAからはP蛋白質が, もう一方のmRNAからはV蛋白質が産生され, 更にいずれのmRNAからも読み枠を変えてC蛋白質が産生されることが示された. V, C蛋白質の機能はしばらく不明であったが, 全長cDNAからウイルスが生成できる技術が確立したことも手伝って, これらの機能が徐々に明らかになってきた. V, C蛋白質それぞれを欠いたノックアウトSeVは作成可能であり, どちらもウイルス増殖にとって必須ではない. ところが, マウスに接種すると, V欠損株は感染一日以降から, C欠損株はほとんど増えることなくマウス体内から消失する. どちらも体内で感染早期に発動する自然免疫に対抗するために必要な蛋白質であることが明らかになった.