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ウイルス
Vol. 55 (2005) No. 1 P 127-132

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http://doi.org/10.2222/jsv.55.127

Special Issue 3

 海洋・湖沼等の天然水圏環境中には夥しい量のウイルス粒子が存在する.それらは個々に異なる生態学的機能を持ち,水圏生態系の維持・変動に関与していると考えられる.筆者らの研究グループでは,微細藻類を中心とした微小プランクトンに感染するウイルスを対象とした研究を推進している.水塊の色相の変化を伴う赤潮という巨視的な生物学的イベントは,プランクトンの大量増殖により引き起こされる.筆者らは,現場調査および分子解析により,赤潮個体群の挙動および赤潮の終息を左右する要因としてウイルスが重要な役割を果たしていることを解明した.また,ウイルスとプランクトンの関係はきわめて複雑であり(すなわち,捕食者と被食者のように「出会えば必ず片方が勝つ」という関係ではなく),あるウイルスにおいてはカプシドタンパク質の局所的な分子構造の差異がエコタイプ間での異なる宿主特異性を決定している可能性を示した.さらに,各ウイルスの性状を詳細に解析する過程で,水圏ウイルスが遺伝資源としても高い価値をもつ可能性を抽出した.水圏生態系の仕組みに関する理解をさらに深化する上で,水圏環境中に存在するウイルスに関する研究の強化が望まれる.

Copyright © 2005 日本ウイルス学会

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