ウイルス
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総説
レンチウイルスの進化とレセプター特異性
宮沢 孝幸
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2005 年 55 巻 1 号 p. 27-34

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抄録
 レンチウイルス属には霊長類レンチウイルス,有蹄類レンチウイルスおよびネコ免疫不全ウイルス(FIV)がある.霊長類レンチウイルスは,CD4分子をプライマリーレセプターに,CXCR4などのケモカインレセプターをコレセプターに使用している.近年,FIVのレセプター分子がクローニングされ,プライマリーレセプターにCD134分子を,コレセプターにCXCR4分子を使用することがわかった.CD134は,活性化CD4陽性細胞に発現する副刺激分子であり,FIVはHIVの標的細胞とほぼ同様の細胞に感染し,免疫不全を誘導することがわかった.またFIVの野外分離株は,ヒトCXCR4を使用できたが,ヒトCD134は使用できず,FIVの宿主特異性をレセプターレベルで規定しているのは,プライマリーレセプターであることがわかった.さらに,FIVの一部の実験室株は,CXCR4のみを介してCD134非依存的にヒト細胞に感染することが可能であった.霊長類レンチウイルスも一部の株はCD4非依存的にケモカインレセプターのみを介して感染することから,自然界では宿主の壁を飛び越えて感染する場合,プライマリーレセプター非依存の変異株が主役である可能性が考えられる.本総説ではレンチウイルスの進化とレセプター特異性について概説する.
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© 2005 日本ウイルス学会
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