抄録
RSウイルス(RSV)は,6ヶ月未満の乳児の下気道感染症の最も頻度の高い,普遍的な病原ウイルスとして知られる.その予防のためのワクチン開発は,副反応などのために成功していない.抗ウイルス薬としては,リバビリンが吸入で使用され,ある程度の抗ウイルス効果が認められたが,対症療法の必要性や,入院日数などへの効果は不明であった.そのため,RSV下気道炎に対しては対症療法が主に行われてきた.近年,抗RSVヒト化モノクローナル抗体が開発され,未熟児や心肺に基礎疾患を有するハイリスク乳幼児に予防的に投与され,入院率の減少という効果が確認された.欧米に続いて本邦でも臨床使用が開始された.抗ウイルス薬については,その後も様々な物資の開発が進められているが,未だ臨床使用されたものは無い.