ウイルス
Online ISSN : 1884-3433
Print ISSN : 0042-6857
ISSN-L : 0042-6857
特集2:C型肝炎ウイルスによる発癌機構とその治療
宿主因子を標的としたC型肝炎ウイルスの抑制
平田 雄一須藤 正幸小原 道法
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 58 巻 2 号 p. 207-214

詳細
抄録

 C型肝炎ウイルスは,高率に持続感染を引き起こし,やがて肝硬変・肝細胞癌へと至る.PEG-IFN及びリバビリンの登場により治療成績は向上したが,本邦で多いとされるgenotype 1b高ウイルス量の患者は依然として治療抵抗性であり,およそ50%の奏効率である.現状を改善するためウイルス側の因子を標的とした薬剤の開発などの多くの試みがなされている.我々は,ウイルスが生活環で利用する宿主因子に着目し,これらを標的とした阻害剤の検討を行ってきた.その中で,セラミド・スフィンゴ脂質合成の最上流酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼに対する阻害剤(SPT阻害剤)が,HCVの複製を抑制することを見出した.SPT阻害剤は,HCV感染動物モデルであるヒト肝臓型キメラマウスを使用したin vivoの実験において,現在最も効果が高いとされているPEG-IFNの20倍量投与とほぼ同等の効果を示し,両者を併用することで相乗効果を示した.その作用機序を解析するため,SPT阻害剤が脂質ラフトに与える影響を界面活性剤不溶性分画(DRM分画)を抽出し検討した.するとDRM上でRNA dependent RNA polymeraseであるNS5BがSPT阻害剤の投与により減少した.さらにBiacoreを使用しスフィンゴミエリンとNS5Bが結合することを見出した.以上の実験結果から,SPT阻害剤はHCVが複製している脂質ラフトにおいてスフィンゴミエリンを減少させ,脂質ラフトにNS5Bが留まれなくなり複製ができなくなるというモデルが考えられた.

著者関連情報
© 2008 日本ウイルス学会
前の記事
feedback
Top