ウイルス
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特集2:ワクチンの現状と将来
エイズワクチン開発の論理
野村 拓志俣野 哲朗
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2009 年 59 巻 2 号 p. 267-276

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抄録
 ヒト免疫不全ウイルス (HIV) 感染症では,自然感染によって誘導される宿主免疫反応によってもウイルスが十分には排除されず,慢性持続感染が成立し,その結果,エイズ発症にいたる.主に自然感染の模倣という概念でワクチン開発が成功してきた急性感染症に対し,このような自然治癒に至らない感染症に対するワクチン開発においては従来の枠を超えた新たな戦略が必要となる.これまでの多大な努力により,技術開発および臨床試験体制構築に進展がみられているものの,感染予防効果を有するエイズワクチン開発には至っていない.結局,どのような免疫反応を誘導すればHIV感染・複製阻止に結びつくかということを明らかにすることが最重要課題となっている.本稿では,適応免疫の代表的エフェクターである抗体と細胞傷害性Tリンパ球の作用に着目し,ワクチンで誘導されるエフェクターとメモリーが,HIV曝露に対しどのような影響を及ぼすかという視点からワクチン開発の論理を考察する.さらに,国際臨床試験計画が進展している我々のエイズワクチンシステムの位置づけを簡単に解説する.
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© 2009 日本ウイルス学会
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