ウイルス
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総説
ワクチンによるロタウイルスの感染制御
中込 治中込 とよ子
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2010 年 60 巻 1 号 p. 33-48

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抄録
 ロタウイルスは世界中のどこでも小児期の重症下痢症のもっとも重要な病因である.感染制御にはワクチンがもっとも有効であり,2009年に世界保健機関は専門家による戦略的諮問委員会の結論として,すべての国で乳児へのロタウイルスワクチン接種を定期予防接種に組み入れるよう勧奨した.2つの経口弱毒生ワクチンが地球規模で承認されている.G1P[8]単価ヒトロタウイルスワクチンであるRotarix(GlaxoSmithKline)と5価ウシ・ヒトロタウイルス組換え体ワクチンであるRotaTeq(Merck)である.2つのワクチンには抗原構成や接種スケジュールなどに大きな違いがあるが,ともに,重症ロタウイルス下痢症に対して90~100%の有効性を示している.また,腸重積症を含め重大な副反応を起こさないことが確認された.これらのワクチンを定期接種に導入した国々では導入から2年以上が経過し,ロタウイルス下痢症による入院患者の顕著な減少がみられ,すべての重症下痢症はほぼ半減するというワクチンの大きなインパクトが現れている.1973年に発見された新興感染症の1つであるヒトロタウイルスは,ワクチンによって感染制御可能な病気の仲間入りをした.
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© 2010 日本ウイルス学会
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