2010 年 60 巻 1 号 p. 87-92
輸血による新たな感染は激減したものの,C型肝炎ウイルス(HCV)キャリアは我が国だけで約200万人とされ,キャリアからの発症予防,慢性肝炎からの肝硬変化,発がん阻止は,高齢化社会を迎え非常に重要な課題である.HCV生活環の各過程の調節機構を分子レベルで明らかにすることにより,治療薬開発のための新たな分子標的が見出される.HCVゲノム複製機構については,近年,複製複合体の性状解析が進み,複製調節に関与する様々な宿主因子が同定されている.筆者らは,ATP産生に重要なcreatine kinase B (CKB)がHCV複製に関与することを見出した.CKBはNS4Aと相互作用して複製の場へリクルートされエネルギー供給に寄与する可能性を示した.この他,粒子形成過程と宿主脂質代謝系との関連など最近のトピックスを紹介する.