2010 年 60 巻 1 号 p. 79-86
B型肝炎ウイルス(HBV)はB型肝炎の原因ウイルスであるが,無症候性キャリアが存在することから,ウイルスの直接的な細胞傷害性はないと広く考えられていた.一方で,生体肝移植後の免疫抑制時におけるB型肝炎やヒト免疫不全ウイルス(HIV)との共感染例においてHBV増殖及び肝線維化が急速に進展するという報告がなされ,HBVによる直接的な肝傷害性が示唆されている.また,HBVには遺伝子型や特異的な変異が存在し,病態形成に関与していることが報告されている.我々は,HBV遺伝子型に対応した複製クローンを作成し,in vitro細胞培養系で遺伝子型によるウイルス複製や蛋白産生能の違いを示している.さらに,近年樹立されたヒト肝臓を持つヒト肝細胞置換免疫不全マウス(キメラマウス)を用いて,各HBV遺伝子型の感染実験を行い,そのウイルス学的な特徴及び病原性の違いを明らかにしたので,概説する.