ウイルス
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特集 HIV研究の新しい展開~第58回日本ウイルス学会シンポジウムから~
Hポストバディングに何が起こっているか?
櫻木 淳一
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2011 年 61 巻 1 号 p. 91-98

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抄録

 一般的にレトロウイルス粒子は,宿主細胞から出芽直後に粒子内ウイルスプロテアーゼが活性化し,構造蛋白Gagを切断することで初めて感染性を持った粒子となることが知られている.プロテアーゼ変異体ウイルスは粒子産生能力は正常に保持しているもののドーナツ様粒子と呼ばれる未熟な粒子を形成し,内包するゲノムRNA二量体も非常に脆弱な結合に留まっている.このように正常な粒子成熟はウイルスが感染能を獲得するために必須の過程であると考えられるが,そのメカニズムについては未だ不明な点が多く残されている.今回我々はHIV-1粒子成熟過程とウイルスゲノム成熟の関係について解析を試みた.粒子形成したGag前駆体Pr55の切断によって起こるHIV-1の成熟過程は斉一なものではなく,いくつかの段階が存在している可能性が示唆されている.我々はその情報を元に粒子成熟過程が中途段階で停止状態になる一連の変異体を作成し,粒子成熟過程におけるゲノム二量体化および粒子形態の変化についての観察を行った.その結果これらの多段階のステップは同期しつつ進行するものの,各々の転換点は完全には一致していないという興味深い知見が得られた.

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© 2011 日本ウイルス学会
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